7月の山岳遭難は最悪ペース…山の診療所と麓の病院の検診で遭難防ぐ リアル“マウンテンドクター” ドラマの医療監修も務める医師が語る山岳医療のリアル
専門は循環器内科ですが、登山を続けるかたわら山岳医療の勉強も開始。2018年、山での病気やけがの知識に加え、高度な登山スキルも必要な「国際山岳医」に認定されました。 市川智英医師: 「せっかく取ったからにはここから山岳医療に関してやっていきたいなと思う中で、松本という土地が登山者にとってはいい場所だったんです」 信州に移住し、現在は松本協立病院に勤務しています。
全国的にも珍しい成り立ちの診療所
「赤岳鉱泉」の診療所立ち上げに誘われたのは2020年。 「赤岳鉱泉」は八ヶ岳連峰を目指す多くの登山者が立ち寄る場所で、一次救命の拠点として最適でした。 かねてから診療所を望んでいた山小屋と有志の山岳医・山岳看護師が運営委員会を設立し、2021年に業務を始めました。 大型連休と夏・冬の週末、公募の医師らが交代で滞在し、警察や遭難対策協議会、ふもとの病院と連携して傷病者に対応します。 北アルプスなどで大学の医学部が運営する診療所とは成り立ちが異なり、全国的にも珍しいケースです。
山の診療所ならではの工夫 「プチプチ」も活用
市川智英医師: 「うちは基本的にはファーストエイドをメインでやっているので、病院にあるような医薬品や点滴は基本置いていないんです」 診察は無料。運営は企業や登山者の寄付金で賄い、医師・看護師の報酬はありません。 このため、備えている医療資材は必要最低限です。 骨折や捻挫をした患部を固定する際は… 市川智英医師: 「貧乏診療所では、段ボールを…。廃棄するのもったいないので代用してます」 段ボールを添え木として使っています。
凍傷には「プチプチ」(緩衝材)を使います。 市川智英医師: 「『プチプチ』を使うことで、安く保温性が保てて、こう、ぐるぐる巻いちゃうんです」
2023年は50人以上の遭難者に対応
2023年に対応した患者は靴擦れや骨折・捻挫、高山病など50人以上。緊急時は救助を要請しますが、最初の診療をして、SNSで麓の病院と容態を共有することで症状の悪化を食い止める役割を果たしています。 山小屋「赤岳鉱泉」の主人・柳沢太貴さん: 「医師がいなかった頃は私どもスタッフが判断しなければいけませんでした。この場で留めて良いのか、すぐ下山させた方が良いのか、そういう判断がちゃんとできるようになったことで、より安全な登山を目指せます」