肝臓にラーメンスープ状の脂が溜まっている…酒を飲まない人の「脂肪肝」が約2300万人もいる衝撃理由
■ラーメンスープのような脂が肝臓にたまっている 近年、アルコールを飲まない人の「脂肪肝」が増えています。脂肪肝とは、肝臓に脂肪がたまった状態のことです。 【図表】脂肪肝の人が避けるべき飲み物、飲んでいい飲み物 本来、食事でとりすぎたエネルギーは皮下脂肪や内臓脂肪となって体内に蓄えられます。ところが、脂肪細胞にもキャパシティがあります。限界を超えてとりこまれた栄養は、最終的に肝臓の内部に脂肪としてたまってしまうのです。 脂肪肝という名前から肝臓の表面に脂肪がつくものと思っている人も多いのですが、そうではありません。細胞質内に脂肪がたまるのです。 脂肪肝の組織を顕微鏡で見ると、肝細胞が風船のようにふくらみ、細胞質内にラーメンのスープに浮いた脂のような滴(しずく)がたまっているのが見えます。この脂肪が増えていくことで次第に肝臓の機能が失われるのです。 脂肪肝は、以前は酒量の過剰な人に見られる症状でしたが、最近ではお酒を飲まない人の、いわゆる非アルコール性の脂肪肝が急増しています。 2016年のデータによると、非アルコール性脂肪肝の人は約2300万人もいて、今も増え続けています。この場合の脂肪肝の主な原因は栄養のとりすぎ、つまり肥満です。 肝臓は「沈黙の臓器」といわれます。体にとりこまれた栄養素を体の各部位で働く形に変換したり、体に害がある物質を速やかに解毒するほか、ウイルスや細菌、カビなどの病原菌が全身に回らないように闘います。これほど多岐にわたる仕事を同時進行で24時間、黙々と続ける働き者なのです。 しかしダメージを受けても痛みがないことから、人はその存在をつい軽視しがちです。しかし脂肪肝患者のうち、1~2割は5~10年で肝硬変に陥る「脂肪肝炎」の状態です。肝硬変とは肝炎の末期症状で、腹水、胸水、黄疸(おうだん)が出現し、肝不全を引き起こす「死に至る病」です。また脂肪肝はがんにもなりやすいのです。 また、脂肪肝は「メタボリックドミノ」の始まりともなります。メタボリックドミノとは糖尿病、心臓病、脳血管障害、心筋梗塞(こうそく)とまるでドミノ倒しのように、さまざまな病気を引き起こす肥満のリスクを指します。脂肪肝は1枚目のドミノです。ここをいかに改善するかが、健康状態を長く維持する要ということです。 ■たったの1カ月で脂肪肝は改善し始める 肝臓に関する医療技術が高度に発達した今も、薬だけで脂肪肝を治すことはできません。しかし脂肪肝を改善するのは難しいことではなく、食生活を改善すればいいだけです。医者にかからなくても、簡単に改善することのできる臓器なのです。 日本肝臓学会による脂肪肝に関するガイドラインでは、7%以上の体重減少で脂肪肝・脂肪肝炎は改善すると記載されています。しかも減量後にBMIが25以上(肥満)であっても、効果はあります。標準体重まで落とさなくても、今の体重から7%以上減量するだけでいいわけです。体がやせるときは、肝臓の細胞質内の脂肪から減少していき、次に内臓脂肪、最後に皮下脂肪が落ちていきます。つまり肝臓脂肪→内臓脂肪→皮下脂肪の順にやせていくのです。 今の体重がどれだけ重くても、減量した分だけ確実に脂肪肝改善の効果が出てきます。ほんの1カ月でもその効果は数値で確認できますから、モチベーションも維持しやすいのです。 では肝臓の脂肪を取るために何をすればよいのでしょうか。脂肪を落とすために脂質を控える人が多いのですが、実は糖質を抑えるのがポイントです。肝臓にもたらされる脂肪の60%は、皮下脂肪や内臓脂肪が溶け出したもので、食事が要因となってたまる脂肪は40%。その内訳は食餌(しょくじ)性の脂質が要因でついた脂肪が15%で、残りの25%は肝臓で糖質から合成されたものです。脂質も影響はあるものの、脂質ばかり抑えて糖質の多い飲食をしていては、改善が見込めません。