タニタにスノーピーク、東大阪の工場、北陸の伝統産業/同族企業の第2創業、成功者たちとは~入山教授インタビュー全4回の2回目
◆日本企業の99%を占める中小企業がブレークすれば
――そういえばユニクロを展開しているファーストリテイリングの柳井正社長や星野リゾートの星野佳路代表も家業を承継した経営者ですね。 その通りです。ビッグネームになった会社にも承継者が家業をガラリと変革し、第2創業を実現した例があります。 日本中、目を凝らしてみると第2創業で成功した会社が意外に多いことに気付き、素晴らしいと思ったのです。 僕は元々、スタートアップの研究をやっていて、アメリカでもベンチャーの研究をして帰国したわけですけれど、事業承継や第2創業に関心を持ち始めました。 中小企業が99%の日本では、第2創業がいろんな会社で起きて、イノベーションにつながることが絶対的に価値あることだと思います。 雑誌プレジデントの連載で事業承継した経営者の方々に会い、現場を見せてもらったのも10年近く前ですね。 ――その時、どんな会社を訪問されたのですか。 最初に行ったのは神奈川県茅ヶ崎市の由紀精密という会社です。 元々はお祖父さんが創業した金属加工の町工場です。 公衆電話の部品などを作っていましたが、公衆電話の部品はどうみてもいずれなくなってしまう状況でした。 その会社をお父さんから引き継いで3代目社長となったのが大坪正人さんです。 大坪さんは東京大学で機械工学を学び、大学院終了後に3Dプリンターによる高速金型製造を行うベンチャーの「インクス(現SOLIZE)」に入りました。そこで開発部門のリーダーとなりましたが、お父さんが経営していた由紀精密を2006年に32歳で継いだのです。 由紀精密が持っていた技術と大坪さんの視点とが重なって、大ブレイクしました。 今ではJAXAや世界大手のジェットエンジン・航空機メーカーのロールスロイスとも取引があり、航空宇宙、先端医療機器などの高精密の部品づくりを手掛けています。 さらに大坪さんは2017年には由紀ホールディングスという持ち株会社を設立し、優れた技術を持った中小企業のグループ化を目指しています。 モノづくりをしている日本の中小企業を変革しようと新たなビジネスを展開しています。