タニタにスノーピーク、東大阪の工場、北陸の伝統産業/同族企業の第2創業、成功者たちとは~入山教授インタビュー全4回の2回目
◆日本の中小企業が持つ「匠の技」を放っておくな
――こうしたケースを見ていると、事業承継の大切さがよくわかりますね。元々あった先代までの経営資源を見極め、そこに新しい視点を入れてイノベーションを生み出すということですね。 僕が日本の事業承継に注目している理由はまさにその点です。ベンチャー企業はゼロから生まれます。 それはそれでいいのですが、日本の場合はほとんどが中小企業で、その中に素晴らしい技術、いわゆる匠の技や人材が存在しているわけです。 そういうもの放っておくと、ともすればビジネスとして成立しなくなっていきます。 由紀精密でいえば、金属加工のすばらしい技術があっても、公衆電話はなくなります。問題はそこで新しいマーケットを作っていけるかが大事で、由紀精密は航空・宇宙分野に参入しました。 会社が元々、連綿と持っている経営資源と新しいビジネスチャンスとを組み合わせることが重要なのですが、今の日本の多くの中小企業にはその組み合わせが足りないのだと思います。 ところが家業とは異なる経験をした承継者が出てくると、新しい組み合わせが試されます。そこに第2創業、イノベーションのチャンスが生まれるのです。 (文・構成/安井孝之)
入山 章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学大学院経営管理研究科早稲田大学ビジネススクール教授。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で、主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008 年 に米ピッツバーグ大学経営大学院より Ph.D.(博士号)を取得。 同年より米ニューヨーク 州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。 2013 年より早稲田大学大学院 早稲田 大学ビジネススクール准教授。 2019 年より教授。専門は経営学。