タニタにスノーピーク、東大阪の工場、北陸の伝統産業/同族企業の第2創業、成功者たちとは~入山教授インタビュー全4回の2回目
◆ジリ貧だった東大阪の工場が
――由紀精密のような会社は多かったですか。 たくさんありますよ。東大阪には「DG TAKANO」という会社があります。 この会社も元々は金属加工の高野精工社という会社で、業務用ガスコックの製造をしていました。 そのままだとジリ貧なのですが、3代目社長になる高野雅彰さんがいろんな経験した後、戻ってきて、第2創業を果たしました。 実は高野さんは家業を継ぐ気はなく、2008年にIT企業を起業しました。 好奇心旺盛だった彼は常に「知の探索」を続ける人で、IT分野でのビジネスの種を探っていました。 その際にたまたま節水ノズルの仕事が持ち込まれたのです。 父親の会社の切削加工技術を知っていた高野さんは「高野精工社の技術を使って品質の高い節水ノズルを作れば必ず売れる」と実感し、節水ノズルづくりに挑戦しました。 その結果、節水率95パーセントの節水ノズルを作ったのですよ。 これが売れに売れて、モノづくり日本会議主催の「超モノづくり部品大賞2009」でグランプリを獲得しました。 日本にいるとわからないのですが、世界中で水不足が起きています。 高野さんは節水ノズルで世界の水問題を解決できると考え、ビジネスの世界展開を進めています。
◆北陸の伝統産業、眼鏡でイノベーション
――ジリ貧だと思われていた東大阪の金属加工の中小企業が見事に蘇ったのですね。 眼鏡産地の福井県鯖江市にも面白い会社があります。 鯖江に西村金属という眼鏡のチタン製部品を作っている中小企業があります。 ご存知の通り、眼鏡産業は中国に市場を取られて、厳しい状況です。 そこに2代目の西村昭宏さんがIT会社などで修行をしてから戻ってきたのです。 西村さんは眼鏡の蝶つがいなどの部品を作っているだけでは生き残れないと思い、いろいろ考えたあげく、西村金属が持っていたチタンの加工技術に目を付けました。高度なチタンの加工技術を使って、眼鏡の完成品を作ろうとしたのです。 それで立ち上げたのが西村プレシジョンです。 普通の眼鏡市場は競争が激しい。西村さんは「高齢化で老眼鏡のニーズは高まるはずなのに市場は伸びていない。 老眼鏡は持ち運びや掛け外しが多いのに、それに適した商品がないからだ。 鯖江の精細な技術を使えばすごい老眼鏡が作れるのではないか」と考えました。 老眼鏡の特徴は普段かけないことです。だけど本を読む時などにはかけるので、ポケットなどに入れて持ち歩きたいのです。 老眼鏡は100均でも売っていますが、100均の老眼鏡は分厚い。 それに対して、西村さんは会社に連綿としてあったチタン技術を使って、厚さ2ミリの老眼鏡を開発したのです。 「ペーパーグラス」と名付けて、「本の栞にもなる」とPRをしたところ、1個1万5000円なのにすごい売れ行きになりました。 今では帝国ホテルに旗艦店があります。