シナモンで心躍るフランスの年末 街角に漂う香りに導かれて
【&w連載】調味料が彩るフランス暮らし
フランスの台所に並ぶ調味料たち。料理のベースとして味を支えたり、少し刺激的なアクセントになったりしながら、人々の生活にいつも寄り添っています。現地在住ライターの髙崎順子さんが、調味料にまつわるフランスのカルチャーや暮らしについて紹介します。 【画像】もっと写真を見る(6枚) 普段からお気に入りだけれど、この季節は特に心が躍る好物、ってありませんか? 食いしん坊の私にはそんな好物がいくつもありますが、フランスの12月となると、筆頭はシナモン(フランス語ではカネル 〈cannelle〉)です。
街角に漂う香りでクリスマスと年末モードに
クリスマスはこの国でもやはり1年でいちばん大きな行事で、祝祭のための食べ物・飲み物にはシナモンがたくさん使われます。スーパーマーケットでは特設売り場から、街中ではクリスマス市の屋台から、時にふんわりと時にブワッとした熱気とともに漂ってくる、あの独特の香り。 それを鼻先に感知してああ年末だなぁと軽く感慨に耽った後、後れをとっているプレゼントの用意やごちそうの買い物に焦りが募る、という一連の流れが、私の「12月のシナモンモード」です。 お菓子系なら、人形や星を模(かたど)ったカリカリのシナモンクッキー。同じ焼き菓子でも、シナモンのほかにクローブ、ナツメグを加えたしっとり生地のパンデピスは、風味がより複雑で食べ応えがあります。パンデピスはドライフルーツやナッツを加えたり、チョコレートチップを入れたりとバリエーションが豊富で、お店によって味や食感が個性豊かに変わります。 私はシンプルなパウンドケーキ型のパンデピスを薄切りにして、厚めに切ったフォアグラを載せて粗挽き胡椒か山椒、もしくは野菜系のジャム(玉ねぎか唐辛子か悩みどころ)をあしらったカナッペが大好物! フォアグラの軽い”レバーみ”がパンデピスのスパイスと呼び合うように引き出されて、濃厚な脂の味に包まれながら舌の上に広がる時間は至福のひと時……なのですが、フォアグラとパンデピスの組み合わせはダメ絶対!という人もいて、会食で出す際にはパンデピス版とパンドミ(食パン)版の両方を準備します。 日本人的には、いぶりがっことクリームチーズをパンデピスに載せてゆず皮をシュッと削るのも美味しそうと思いつき、今年こそは試そうと画策しています。