「逆らえば、“飼い殺し”に……」兵庫・斎藤知事に対して県職員が感じる「あからさまなプレッシャー」
亡くなったA氏に退職金は支払われていなかった
亡くなってしまったA氏、B氏に対する問題はこれだけではない。別の県職員は声をひそめてこう明かす。 「懲戒処分で保留にされた前県民局長(Aさん)に対する退職金が支払われた、とは聞いていません。Aさんが告発文書を公表したのは3月12日です。そしてAさんはその3月末に定年退職する意向を示していました。しかし、斎藤知事がAさんに対して、信用失墜や名誉毀損の告訴を含め、『法的手続きの検討を進めている』と発言したのが3月27日です。この時の会見で、知事はAさんの退職を認めず、定年を保留にして5月に3ヵ月の停職処分にしたんです」 県がA氏の定年退職を認めず、A氏が希望していなかった雇用を続けたのは、どんな理由が考えられるのだろうか。 「定年退職であれば、退職金等の支給は予定通りもらえますが、“降格処分”にすることによって、本来受け取れる満額の退職金を減額したともとらえられますよね。 ですから、表立って知事の批判をすれば『私たちも報復人事にあうのではないか? そうしたら妻子はどうなるのか?』という不安に襲われます。我々は定年退職金の満額支払いを盾に、口を封じられているも同然なんです」(前出の職員) さらに別の県職員は異動等を知らせる「職員案内システム」を見て、恐怖心を抱いている。 「告発者のA氏は3月27日、知事が会見した後、西播磨県民局長から異動となり、総務部付となりました。 職員案内システムに今も名前が残っていますが、他の職員と違うのは、A氏のデータベースには電話番号等の連絡先が一切書かれていない。連絡不能な扱いにしています。県知事に逆らえば、“飼い殺し”にあうのかとゾッとしている」 A氏の退職が保留にされ、県職員の身分で自死した後、退職金の支払いについてどうするつもりなのか。FRIDAYデジタルは兵庫県総務部人事課に質問状を送ったところ、以下のような回答があった。 「退職の保留は事実ですが、降格は事実ではない。退職金については、必要書類が整い次第、速やかに手続きを進めさせていただく予定です」 県の回答によれば、西播磨県民局長だったA氏は3月27日付で総務部付に異動となり、4月1日付で総務部付のままだったが、同県の役職定年制度により等級が下がったという。県は「降格」ではなく「異動」だと主張しているが、額面通りに受け取っていいのだろうか。 A氏の退職を認めなかったことは兵庫県の判断だとしても、A氏が希望もしていない継続雇用をしたことについて、兵庫県はどう説明するのだろうか。A氏は3月末で退職した後には、住み慣れた姫路市のある教育機関で4月から講師となることが決まっていた。「継続雇用など望んでいたはずがない」と県関係者は証言する。 また、退職金は退職時の等級によって決まるため、県が回答したように「降格していない」というのであれば、西播磨県民局長としてもらえる額で計算されるはず。兵庫県はその額を支払う準備を本当に進めているのだろうか。「注意深く監視しなくては、何をされるか不安だ」と県関係者がおそれる理由がよくわかる回答だ。さらに別の職員はこうも明かす。 「局長(Aさん)はパソコンを取り上げられて14年分の過去ログを探られたと聞いています。知事の強大な権力を行使して、何としても身の回りを調べ上げて弱みを握り、黙らせる、という県当局の強い意思と圧を感じた」 真相究明には、県職員の証言が不可欠だが、職員に対してあからさまなプレッシャーがかけられている今、真実がきちんと報告されるかどうかは、はなはだ疑問だ。
FRIDAYデジタル