「二日酔い」でもお世話になる漢方薬、科学で明らかになった「水分」を調節する、すごいメカニズム
私たちにとって身近なツボや鍼灸、漢方薬。近年、そのメカニズムの詳細が西洋医学的な研究でも明らかになってきています。例えば<手のツボが便秘改善に効くとされるのはなぜ><ツボに特徴的な神経構造が発見された?><漢方薬が腸内細菌の「エサ」になっている?>など、興味深い研究が数多く報告されているのです。最新の研究では一体どんなことが明らかになっているのでしょうか。 【図解】五苓散の水分調節作用のカギを握る「アクアポリン」 そんな東洋医学のメカニズム研究の最前線をとりあげ、新聞やYouTubeなどでも紹介された話題の一冊、『東洋医学はなぜ効くのか』(講談社ブルーバックス)。コミカライズに向けたコンテストも開催されている本書から注目のトピックをご紹介していきます。今回は、頭痛やめまい、むくみ、二日酔いなどの症状改善に処方される漢方薬の五苓散(ごれいさん)のメカニズムを紹介します。 *本記事は、『東洋医学はなぜ効くのかーーツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
「五苓散」はどんな漢方薬?
今回は体内の水分に注目して漢方薬のはたらきを見てみましょう。人の体はほとんどが水分と言っても過言ではありません。成人男性では体重の約60%は水分です。ですから体の水分を調節することは健康と切っても切れない関係にあるのです。 そこで登場する漢方薬が五苓散です。この漢方薬には、利尿作用を持つタクシャや、抗炎症作用を持つソウジュツなどの5種類の生薬(タクシャ、ソウジュツ(ビャクジュツ)、チョレイ、ブクリョウ、ケイヒ)が含まれます。 五苓散は、頭痛やめまい、むくみ、二日酔いなどの症状改善に処方される漢方薬です。また、近年では脳浮腫などにも処方されるケースが増えていると言います。臨床試験では、病気や手術後の嘔吐の軽減に対する効果も報告されています。 五苓散は、古くから水毒という状態の改善に有効だとされてきました。東洋医学では、心身の不調を見極めるとき、「気血水」という考え方が用いられており、この3つが滞りなく循環してバランスの良い状態が保たれることで健康が成り立つと考えられています。五苓散は、この「水」が滞った状態である水毒を改善し、頭痛などに良いとされてきましたが、そのメカニズムは明らかになっていませんでした。