「関ケ原」と並ぶ天下分け目の戦い「小牧・長久手」 もう知らないとは言わせない? 地元自治体が予算ゼロの「同盟」結成
「お金をかけず、今やれることを…」
発起人の一人、日進市・岩崎城歴史記念館に勤務する内貴健太さんは「まず考えたのは、迅速にやること、お金をかけずにやること、自主的にPR活動をやりたい人の顔つなぎの場とすることの3つ」と話す。 小牧市・小牧山城史跡情報館「れきしるこまき」の学芸員、菅沼加那さんは「戦いの知名度がとても低く、学会でも研究はまだまだの状態。そんな中で自治体に意義などを説いて負担金を求めるようなことをしていると、かえって動きづらい。それならば、とにかくお金をかけずに、自分たちで今やれることをやり始めようというスタンスです。各市の協力を得ながら現在制作中のYouTube動画の編集も私がやっています」という。
同盟の活動第一弾は、ゆかりの地を紹介するポスターの制作。関係各市から素材写真の提供を受けた日進市が作って、それを各市に配布して広域の関係施設に貼り出してもらった。今後は、市ごとに講演会などを企画し、その内容・アイデア・講師などの情報を同盟内で共有することでより効果的なPRを目指すという。同盟としての予算はなんと「ゼロ」。学芸員たちの手弁当で各々PR活動が進められる。 内貴さんは「実は、各市の学芸員同士の顔つなぎができていないのが現状です。しかし、この同盟によってお互いの顔が分かるようになれば、お金がなくてもアイデアを出し合うことによって協業が始められるはず」と同盟を結ぶことの意義を話す。
いまのところ、関わり深い名古屋市は参加せず
同盟は「来るものは拒まない」という。となると、気になるのは現在加盟している8市とは比べものにならないほど大規模の政令都市、名古屋市の動きだ。名古屋市守山区には家康が入ったとされる小幡城跡や秀吉がやって来たとされる龍泉寺城跡がある。両軍の行軍ルート上にもあたっており、他の自治体に負けず劣らず、この戦いに関係の深い場所といえる。
名古屋市の関係部署に問い合わせてみると「誘われたわけでないので同盟の話は知らない。学芸員らも話はしていないのだろう。こちらとしては傍観するだけ」とそっけない答えが返ってきた。「小牧・長久手の戦い」に関する自主講座などを行う「守山郷土史研究会」の幹事、道木正信さんにも尋ねてみたが、「守山区も濃密に関連しているのでなにか協力したいとは思うが、名古屋市から話があれば協力するというのが会としての筋」という。筆者としては、名古屋市にもぜひ参加してほしいと思う。 ちなみに、名古屋市は「どうする家康」に関連する観光予算として2022年度予算案に2000万円を計上。織田家の人質時代の家康ゆかりの場所である「大須万松寺」や人質交換の場所とされる「笠寺観音」などをPRする計画を立てている。手弁当で活動している同盟の発起人たちは、規模感の違う名古屋市に対しては一歩退いた感覚を持っているようで、このあたりはかなり残念だ。