心理学者が解説、「恋に落ちる」とはどういうことか
新しい恋愛の感情的な高揚感は非常に心地よいものであるが、失望や不安感も同様に強く感じられることが多い。この体験はスリリングである一方、心に負担をかける。こうした感情の背後には複雑な生物学的プロセスが隠されており、恋愛は脳内の強力な化学物質を活性化し、感情の高まり、絆の形成、そして相手への集中を促す。 以下に、恋愛における脳の複雑な化学反応の主な要素を紹介しよう。 ■1. ドーパミンが引き起こす魅力の火花 恋愛の初期段階では、ドーパミンが大量に放出され、相手に対する強烈な魅力を生み出す。ドーパミンは「気分を高揚させる」神経伝達物質として知られており、相手と一緒にいるときや思い浮かべるだけでもその効果が表れる。 ドーパミンは脳の報酬系を活性化させるが、この報酬系はギャンブルや薬物依存などの行動にも関与する部分でもある。 2016年に『Frontiers in Psychology』に掲載された研究では、「強い恋愛感情の初期段階にある人々は、物質依存や行動依存と類似した状態を示し、幸福感、渇望、耐性、感情的・身体的依存、禁断症状、再発といった現象が観察される」と説明されている。 例えば、相手からの視線、共有した笑い、メッセージの通知音でさえ、ドーパミンの急増を引き起こし、幸福感をもたらし、さらに相手を求めるようになる。この初期の感情の高まりが、深い愛着や強い感情の基盤を形成する。 ■2. ノルアドレナリンと興奮の高まり ドーパミンが快感を引き起こす一方で、ノルアドレナリン(またはノルエピネフリン)が身体的および感情的な反応をさらに高める。これが、相手といるときに手に汗をかいたり、心臓が高鳴ったり、神経が高ぶったりする原因だ。 ノルエピネフリンは集中力を高め、警戒状態を維持し、恋愛対象への注意を固定させ、他のことを考えるのを困難にする作用がある。この化学物質は、心拍数の上昇、血管の収縮、警戒心の増加によって闘争・逃走反応において重要な役割を果たし、身体的・感情的な課題に対処できるよう脳と身体を準備する。 ハーバード大学医学部の精神医学教授であるジャッキー・オールズ博士は、アメリカ心臓協会とのインタビューで「恋愛初期の段階では、フェネチルアミン(ホルモン様物質)がドーパミンとノルアドレナリンの放出を引き起こし、喜びと興奮を増幅します」と説明している。 「この反応こそが、相手に近づきたいという行動を引き起こし、空を飛んでいるような感覚をもたらすのです」とオールズ博士は述べている。