心理学者が解説、「恋に落ちる」とはどういうことか
恋に落ちた脳の働きを理解しよう
■3. コルチゾールの上昇とセロトニンの低下による恋愛の執着 恋愛初期には、体の主要なストレスホルモンであるコルチゾールが急増し、新しい愛着に伴う感情的な不安に備える。このコルチゾールの増加は、気分の調節に関与するセロトニンのレベルを低下させ、相手に対する執着を強める。 この化学的な変化により、スマートフォンを頻繁にチェックしたり、会話を繰り返し考えたり、相手と連絡が取れないと不安に感じたりする行動が説明できる。 ハーバード大学医学部の精神医学教授であるリチャード・シュワルツ博士は、これらの考え(相手のことを絶えず考えたり、彼らの感情を気にしたり、やり取りを繰り返し思い返したりすること)が強迫性障害(OCD)の症状と似ていると指摘している。シュワルツ博士はこれを「初期の恋愛における、侵入的で心を狂わせるような思考、希望、恐怖」と表現している。 ■4. オキシトシンとバソプレシンが育むロマンス 2017年に『Frontiers in Endocrinology』に掲載された研究は、オキシトシンとバソプレシンが協力して恋愛を形成し、感情的な結びつきと保護的な行動を促進する仕組みを解説している。 「抱擁ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは、身体的な接触や親密さを通じて放出され、信頼と感情的な親密さを強化する。これにより、安心感と満足感が得られ、カップルの絆が深まる。 バソプレシンはオキシトシンを補完し、一夫一婦制、忠誠心、そして保護的な行動を促進することで、長期的な愛着を支える役割を果たす。この二つのホルモンが協力することで、関係に安定性と持続性がもたらされ、困難な時期にもお互いを支える土台が築かれる。 この研究は、ロマンチックな愛がオキシトシンとバソプレシンの相乗効果によって支えられていることを強調している。オキシトシンは感情的な親密さを深める一方で、バソプレシンは関係へのコミットメントと保護本能を強化する。その効果は個々の経験、感情的な背景、性別といった生物学的要因によって異なるため、恋愛は一人ひとりにとって異なるダイナミックな体験となる。 これらのホルモンの相互作用は、初期の興奮状態から深く持続的な絆へと関係を進展させ、長期的な安定性を確保する。恋に落ちた際に脳がどのように反応するかを理解することで、恋愛がなぜこれほど心を消耗させるのか、その背後にある喜び、集中力、そしてコミットメントの科学を理解する手がかりを得ることができる。 なお恋に落ちることは特別な体験だが、もし毎回不適切な相手にばかり恋をしてしまう場合、それは「エモフィリア(恋愛感情を抱きやすい人)」かもしれない。
Mark Travers