ポルシェ911にF1エンジン 600馬力超のレストモッド「TAGターボ」はなぜ生まれたのか
顧客の声で作られた3台の特別仕様車
彼は、当時の車両と同じような外観にする必要があると「断固として」主張し、顧客にもポルシェの色や素材から選ぶよう頼んだ。TAGターボ911にはサンルーフや電動ミラー、オリジナルのステアリングホイールが装備されていることに触れ、「ピンプ・マイ・ライド(自動車改造番組)みたいなクルマではないんですよ」と冗談めかして言う。 しかし、特に重要な顧客がいた。1985年のチャンピオンシップで優勝したアラン・プロストのマクラーレンMP4/2のオーナーで、 "標準" のTAGターボ911の510馬力以上のパンチを求めていたのだ。 「マクラーレンは4barのブーストで走っていました。わたし達は3barです。彼らはレース用燃料を使っていましたが、わたし達は通常の燃料を使うので圧縮比を下げました」これはパワーと使い勝手の「トレードオフ」だとランザンテ氏は言う。 彼はこの1人の顧客の影響力を見込んで、TAGエンジンのマクラーレンが獲得した各タイトルを称える3台の “チャンピオンシップ” エディションを製作する計画を立てた。625馬力にパワーアップし、400kgの軽量化によって乾燥重量920kgに抑えている。 そして、3台にはドライバーのヘルメットにちなんだカラーリングが施される。2台はアラン・プロストのフランス国旗、もう1台はニキ・ラウダのオーストリア・マールボロである。 チャンピオンシップ・エディションの詳細について、ランザンテ氏は次のように述べている。 「シートベルトにはヒューゴ・ボス(Hugo Boss)と書かれています。ステアリングホイールはパーソナル製で、アルカンターラではなくスエードを使用しています。すべて時代を反映したものです。シフトレバーはF1マシンと同じデザインで、ホイールはダイマグがオリジナルの図面を拡大して作ったもので、スポークのパターンはF1ホイールと一致しています」 ドライバビリティへの譲歩(「安全対策」)としてトラクションコントロールが搭載されているが、ランザンテ氏は「少しだけ凶悪」だと言う。