暗号資産相場、アメリカ大統領選挙後に再び活況を呈すが…投資としての「トークン出資」を行う際の注意点【弁護士が解説】
トークン出資の際の注目ポイント
(1)業規制違反に注意する トークン投資を実施する投資家の立場では、上記で確認したトークンの法的性質や資金調達のスキームを踏まえ、発行体事業者において金融関連法規の業規制違反がないかを確認することが重要である。仮に無登録営業の発行体事業者からトークンを購入したとしても、それ自体投資家において直ちに法律違反等に該当するものではないが、資金調達におけるコンプライアンスが怪しい事業者のトークンプロジェクトに持続性や発展性が期待できるかは疑問である。 きちんとした発行体事業者なら、上記の「株式/新株予約権等による資金調達」で挙げた方法のように、特段の業登録等を取得せずに資金調達を行うのであれば、当該資金調達が適法であることにつき、弁護士等に相談するなどして法的な見解を整理しているはずである。 安易に海外におけるトークンによる資金調達スキームを直輸入し、「海外で使われているのだから、日本でも使えるはず」などといって日本法の適用を無視しているケースもあるので要注意である。 (2)ホワイトペーパーをしっかり確認する トークンプロジェクトでは、プロジェクトの概要や将来の事業計画等を明記したホワイトペーパーが作成されるのが通例である。トークン出資の際、ホワイトペーパーでプロジェクトの持続可能性や発展可能性について精査することが必要不可欠である。 多くのトークンプロジェクトの失敗事例は、トークン出資による資金調達のみを行い、その先のトークンエコノミーを構成する事業やシステム開発等が頓挫するというものである。分散型のプロジェクトであれば、事業の責任主体も推進主体も曖昧になりやすい。実現性に乏しい事業計画となっていないかは十分に確認すべきである。 (3)出資先事業者をよく確認する 出資先となるトークンプロジェクトの事業者が明確であるかは、いざというときの法的な責任追及の可否に直結する問題である。Web3のプロジェクトは分散化されたプロジェクトであればあるほど、特定のだれかではない、プロジェクト自体に出資をするという形になりかねない。 どこのだれかわからない人に暗号資産で出資することになれば、仮に詐欺であることが発覚したとしても、ほとんど被害回復は不可能である。また、プロジェクトの中心となる事業者が海外事業者である場合は、仮に当該事業者の存在が明確で特定できても、国境をまたいだ責任追及には多額の費用と時間を要することになる。 したがって、出資先となる事業者が確実に存在しているか、信頼に足る事業者か、国内事業者か等は、極めて基本的なところであるが、重要である。 なお、海外事業者であるとしても、日本居住者向けにWeb3ビジネスを行う場合は、基本的に日本法の適用を受ける。したがって、海外事業者であることを理由に、本稿で解説した法適用を受けないと説明して無登録で出資を募るケースなどは十分に注意したい。
まとめ
トークンプロジェクトへの出資の際には、本稿を参考に、投資対象の健全性を十分に精査することをお勧めする。 トークンの法的性質によって適用される法規制は異なり、発行体事業者が資金調達を行う場合のルールは異なる。具体的な投資局面において、発行体事業者のコンプライアンスに不安を覚えた際には、出資前にWeb3関連の法規制にくわしい専門家への相談を検討してほしい。 弁護士法人GVA法律事務所 パートナー弁護士 熊谷 直弥
熊谷 直弥