暗号資産相場、アメリカ大統領選挙後に再び活況を呈すが…投資としての「トークン出資」を行う際の注意点【弁護士が解説】
トークンプロジェクトの資金調達方法と法規制
(1)トークンによる直接的な資金調達 トークン発行を伴うWeb3プロジェクトの資金調達方法として、最もストレートな手法は、海外のプロジェクトに多い「トークンへの直接投資」である。すなわち、投資家は事業体が発行するトークンを購入することで出資を行い、プロジェクトの成長によりトークン価値が上昇すれば、投資家は当該トークンを売却することでキャピタルゲインを得る。 海外では、SAFT(Simple Agreement for Future Token)と呼ばれる投資契約書式が活用されている。これは、投資時点では未発行のトークンを、発行後に割安で購入できる権利等に対して対価を支払う形式で出資を行うものである。 しかし、現状の日本の法規制において、暗号資産に該当するトークンについて、SAFTの形式で出資を募るには、トークンの発行体事業者において暗号資産交換業(資金決済法2条15項)の登録が必要であると考えられる。そのため、暗号資産交換業の取得のハードルが高い現状では、そのままSAFTを活用することは難しい。 したがって、現在、トークンの発行体が暗号資産交換業のライセンスを取得することなく、トークンで資金調達を行うための手段としては、IEO(Initial Exchange Offering)と呼ばれる暗号資産交換業登録を取得した交換所を介した販売が一般的である。IEOでは、暗号資産交換業者と業界団体によって、トークンの発行体事業者やトークンを用いる事業の継続可能性等が審査されることで、投資家の保護が図られている。 (2)株式/新株予約権等による資金調達 上記のIEOは、株式の新規公開(IPO)に準じた時間的及び金銭的コストを要するものであり、機動的な資金調達という面では難点がある。そのため、既存の資金調達方法である株式や新株予約権の私募が活用されるケースも多い。この場合、トークン発行体の事業者がクローズドに少数の投資家に対して、自社の株式や新株予約権を販売する際には、とくに業登録等を必要とするものではない。 近年、あくまで自社の株式や新株予約権等に対する出資の形式としつつ、株式等に付随するいわば「おまけ」の形で将来的なトークンの付与を約束する覚書を締結するケースもみられる。「暗号資産」に該当するトークンを業として有償販売する行為には暗号資産交換業の登録が必要なのは既述のとおりだが、当該トークンを発行して無償で配布する行為には、暗号資産交換業の登録は不要である。 したがって、株式等のおまけとして、対価を得ないでトークンを付与することは、直ちに暗号資産交換業の登録を要するものではないと考えられる。もっとも、主客が逆転し、実質的にトークン販売となる行為を無登録で実施することのないように十分注意を要するものである。