中高年の国防意識、ロシア隣国で高まる…ソ連時代の過酷な記憶鮮明
ロシアと国境を接するエストニアやフィンランドでは、ウクライナを侵略するロシアから軍事侵攻されるという最悪の事態に対する備えへの意識が一段と高まっていた。(吉岡みゆき) 【動画】ロシア軍の装甲車、道路に置かれた地雷を踏んで爆発
1991年の旧ソ連崩壊に先立ち独立したエストニアでは、国防への熱意を鮮明にする中高年層が少なくない。ソ連時代に殺害や投獄、強制移住の被害を受けた国民が7万5000人以上いるとされており、独立を果たすまで苦しんだ記憶が鮮明だからだ。
曽祖父とおじが犠牲になった歴史研究家のミーリス・マリプーさん(58)は「軍の予備役なので、ロシアがエストニアをまた攻めてくることがあれば、必ず戦う。誰かが守ってくれることを頼りにはできない」と力強く話した。
エストニアの調査研究機関「国際防衛安全保障センター」のクリスティ・ライック副センター長は「もしロシアがウクライナ領土の一部を得る部分的勝利を収めれば、エストニアを含む周辺諸国の安全保障への脅威は非常に高まる」と警鐘を鳴らしている。
一方、人口550万人のフィンランドでは、専門知識を身につけ国防に役立ちたいという若者が増えている。国防大学によると、2024年の士官候補生課程への志願者数は、ロシアのウクライナ侵略が始まった22年と比べて24%増の730人だった。
22年に徴兵を経験したエリアス・バイニオさん(22)は「自分の国を守りたい」と課程で学んでいる。「今ロシアがウクライナにしていることは、授業ですでに出てきたロシアの戦術パターン通りだった。対応する準備は万全だ」と士気が高い。フィンランド国内には爆撃に備えて約5万か所のシェルターがあり、480万人の収容が可能だ。一定規模の集合住宅にはシェルター設置が義務づけられており、首都ヘルシンキの公的シェルターには、民間が運営する子ども向け施設やスポーツ施設として使われているところもある。