秋発売のスズキ「フロンクス」は走りにちょっと上級感!? 辛口モータージャーナリストがホンダ「WR-V」と乗り比べてみました
電動パーキングブレーキや全方位モニターなどの安全装備もポイント
ちなみに、WR-Vでこの場にやってきた身として、すぐにフロンクスが1枚上手と思えたのは、電動パーキングブレーキが備わっていることだった。WR-Vは、手動レバー式のパーキングブレーキを採用することから、せっかく標準装備のACCも、停車までの前車追従の機能がないため、30km/h以下での使用はできない。機能をオンにして走行している場合も、25km/hまで速度が落ちるとオフになってしまう。対して、フロンクスは全車速追従ACCが標準装備で、低速や渋滞路等でもその役割を果たすこと、これによって使用できる範囲も使用時の安全性も高まる。最新モデルを選ぶという意味合いも、こういう安全快適装備の存在が大きいものだ。 インパネセンター上部に存在感大きく鎮座する9インチディスプレイは、標準装備というナビゲーションとともに、スズキコネクト、スマートフォン連携機能、表示できる車両情報などは新型「スイフト」や最新「スペーシア」などにオプション用意されるものと同じようだが、いずれにも共通で好ましいのは、全方位モニターを備えていること。 必要に応じて車両の周り360度をモニター画面で確認できるのはもちろんだが、エンジン始動直後にはまず車両の周り360度をカメラによる映像を合成してグルリと回るようにして映し出す。この機能はそれこそ発進前からの安全性能ともいうべきもので、フロンクスのようにここまでを「標準装備」にしているのは、このクラスでは他に思い当たらない。
ステップシフトの6速ATがちょっとした上級感をもたらす
走り出すと、アップダウンに富む試乗コースということもあって、エンジン的にはパワー面でも強い印象を残すようなことがなく、また、なめらかでスムーズだとか、音色が心地よいとか、そういった面においては平凡に思えるものだった。いわば実用エンジンの典型といった性格なのだが、トランスミッションがこのクラスの日本車に多いCVTではなく、6速ATが与えられていることで、なんとなく小気味よい走り感を付加することになっていた。 エンジンの効率の良い領域を使うという面ではCVTは優秀だが、エンジン回転の変化と加速度がリンクしないこと、エンジン音がちょっとした負荷で捉えどころのない変化を繰り返すなど、個人的にはCVTは人の感性に沿った心地よい走り感はなかなか得られにくいと考えている。 ただ、世界の中でも、軽自動車はもちろん、日本車はトヨタのハイブリッド(THS2)の電気式CVTなどとも合わせ、CVTの採用車が突出して多いことから、このフィーリングに慣れてしまっている人も多そうだ。 思えば、フロンクスは日本メーカー製であっても輸入車。ここは異論もあることを承知のうえで言わせてもらうが、CVTではなくステップシフトの6速ATを採用しているという時点で、ちょっとした上級感をもたらす、というイメージは抱いている。 なにより、ホンダWR-Vで、日常域はスムーズで悪くないが、途中のワインディングではエンジン回転を自分の意思通りに保てないCVTがもたらす曖昧さ、もどかしさを味わってきた直後だけに、多段ATとの組み合わせが、クルマを操る感や意思疎通では数段上になると思わせるのだった。 さらにパドルシフトを備えることも、望む時に躊躇なくダウンシフト操作を行えることや、その際の減速度もギアに応じた選択度が高いことなども好ましいと思える。ただし、WR-Vに関していえば、CVTだが擬似多段化を可能にするパドルシフトも備えていることで、こと減速時のエンジンブレーキの使い勝手はなかなか優秀だった。
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