【考察】ベリンガムとエンバペ。ブラジル神童も加入でスター集結のレアル、指揮官はどう共存させるのか?
とうとう、この時が来た。キリアン・エンバペがついにレアル・マドリーの選手になったのだ。サッカー界最大の移籍のひとつが成立し、契約がかわされ、「公式会見」が行われた。 おそらく全当事者にとって、よかったことだろう。歴代最高の選手を失ったパリ・サンジェルマンは必ずしも嬉しくないだろうが、フランス王者は長期的な成功のために新しいチームを構築中であり、エンバペがいなくなっても成長できるよう、どんどん選手を集めているように見受けられる。 一方のレアル・マドリーは白鯨を手に入れた。ずっと以前から知られているとおり、エンバペは少年時代、クリスティアーノ・ロナウドがアイドルだったレアル・マドリーのファンであって、このスペインの首都のチームにいつか所属することが夢だと言ってはばからなかった。 これについて、多くの夢物語が語られてきた。考えてみるといい。ヴィニシウス・ジュニオール、エンバペ、ジュード・ベリンガム、ロドリゴが同じチームにいるのだ。だが、ある時点で夢物語は終わりをつげ、現実が始まる。事実、レアル・マドリーの前線はすでに渋滞しており、現在のシステムのどこにエンバペを配置するのが最善なのかは、カルロ・アンチェロッティ監督が解決しなければならない問題のひとつである。 エンバペの獲得は決して悪いことではない。だが、ヴィニシウスやベリンガムといったバロンドール最有力候補に悪影響を及ぼすことなく、全員をチームにフィットさせることは簡単なことではないだろう。 文=トーマス・ヒンドル
以前の銀河系軍団で抱えていた問題
エンバペをあるチームに入れて、チームメイトたちと共に成功させるのはそれほど簡単ではない。実際、最近の事例を見ても、それがまったく良い考えでなかったことは明らかだ。 リオネル・メッシとネイマールとエンバペのトリオは、パリにヨーロッパ最強の攻撃をもたらすと思われたが実際は機能性を発揮したとは言えなかった。3人の攻撃はまったく連携を欠き、ケガやエゴ、守備での手抜きが相まって、欧州最高を誇るはずのチームはチャンピオンズリーグを勝ち取れなかった。 エンバペだけが問題だったわけではない。メッシは決してパリに来たかったわけではなく、ネイマールのマナーや足首のケガも事態を悪化させた。だが、エンバペはPSGの副キャプテンとしてチームを牽引し、まとめるべきだった。それでも、まだ20代半ばの若者に背負わせるには大きすぎたのかもしれない。いずれにせよ、エンバペはチームの中心となって活躍することができず、権力闘争にはまり、パリで約束した期間は失望に変わってしまった。 これらのことは、レアル・マドリーにとって少し不吉なことである。PSGと異なりこの上なく有能な監督に率いられたチームであるとは言え、同じ問題が起こりうる。ベリンガム、ヴィニシウス、ロドリゴは、おおかたの見方によれば、良きチームメイト同士である。だが、ビッグネームが複数関わってくると、毒素が回ってくる可能性がある。それに、彼自身が原因であろうとなかろうと、エンバペには常に騒ぎがつきものだった。