〈東京都現代美術館〉で参加型アートの立役者、開発好明が遊び尽くす。
社会の小さな声に耳を傾け続けてきた現代アーティスト、開発好明(かいはつよしあき)。30年以上のキャリアを持つ彼の大規模個展が、8月3日から11月10日まで〈東京都現代美術館〉で開催される。個人と社会の対話を紡ぐ、そのアート哲学とは。 【フォトギャラリーを見る】 開発好明は社会や日常生活における出来事への関心を起点とした観客参加型の美術作品を中心に発表してきたアーティストだ。絵画、写真、パフォーマンス、インスタレーションといった作品制作のほか、毎年3月9日をアートの記念日とする「39(サンキュー)アートの日」の発案・提唱や、学校や地域でのワークショップにも精力的に取り組んできた。その枠に囚われない活動ゆえに、美術館での収蔵や展示が前提とされていない作品も多く、キャリアを俯瞰する機会は限られたものだった。そうした制約を乗り越えた今回の展示では、日々の出来事や社会の変化に向き合ってきた開発の作品やプロジェクトから約50点を紹介する。
元BankART代表の故・池田修氏が「ひとり民主主義」と呼んだ開発好明の活動の哲学は、社会構造や制度、共同体、出来事に対する個人的な介入を特徴とする。「寄り添うアクティヴィズム」としても表現される手法には、自分や友達に書いた手紙が1年後に届く《未来郵便局》、「誰もが先生・誰もが生徒」という合言葉のもと授業を行う《100人先生》、地下スタジオに様々なゲストを招く《モグラTV》など、郵便、教育、マスメディアの既存フォーマットを利用したプロジェクトが含まれ、メッセージの発信者と受け手の間が対等であることを示唆する。
2011年には東日本大震災を受け、作家仲間や友人たちとともに、阪神淡路大震災で被災した西日本から東日本大震災と福島第一原発事故の被災地まで義援金を集めるための移動チャリティー展覧会「デイリリーアートサーカス」を開始。2014年まで毎年開催したこの活動を通して得られた被災地域の人々との関わりや現地での体験は、その後《政治家の家》(2012-)や、失われつつある地域言葉を収集する《ことば図書館》など、福島での様々なプロジェクトへと繋がった。