【カワサキW230試乗】コイツはシンプルで軽快!ほどほどな18馬力の性能に和めるストリートモデル
120km/h弱まで使える高速性能と、それを十分まかなえる車体性能
幹線道を走り、次に120km/h制限の高速へ上がってみる。60km/hから90km/hまではまったくストレスなく加速して駆け上がる。トップ6速のメーター読み80km/hでは約4800rpm、100km/hでは約6000rpm。レッドゾーンは8500rpmだから、ムチを入れればもう少し速度は伸びていくはずだと、回転を上げていく。フライホイールが重めとはいえ、高回転に向かっていく単気筒エンジンがまったく苦しい感じもなく回転上昇していくのは意外。だが、メーター読みで120km/h近くとなり7000rpmを超えた辺りで、燃料がカットされたかのようにリミッターがかかり、それ以上は加速しない。おそらく、過回転を防ぐねらいでの設定なのだろうが、少々リミッターの効きが早く感じた。 とはいえ、そうした回転域でもエンジンは苦しそうではなく、振動は内部のバランサーでうまく低減されているのだろう。尻から小刻みなものが感じられる以外、小粒の振動がハンドルに出はするものの、気になるレベルではなかった。 そして、街中から前述した高速域までをひと通り試して気づいたのは、その間の車体挙動にも別段不満を感じていなかったこと。前後サスはリヤにプリロード調整が付くだけのシンプルなものだが、低速でも跳ねることなくそこそこに追従し、路面の凹凸も鷹揚にいなす。120km/h近くの高速域ではやや追従性は怪しくなるものの、それも許容範囲。エンジンの動力に見合ってちゃんと仕事をしている印象だった。 もう一つ印象深かったのは、その軽量な車体でのコーナーの切り返しが、フレキシブルでなかなか楽しいこと。特にハイグリップではないバイアスタイヤとそこそこのサスペンションの性能、フレームも含めた車体の挙動は常に違和感がないのだった。しばらく走り続けていると、ステップはもう少し下でもいいのではないかと感じてくるが(ヒザの曲がり角はそこそこ大きいのだ)、それもバンク角を犠牲にしないのに一役買っている。ヒラヒラと切り返す軽快なロードスポーツとしても好感が持てる設定と言えそうだ。ただし、身長170cm以上の体格なら、シート座面をもう少し盛って高くしてもいいかもしれない。 前後ディスクブレーキも適度な性能だ。さほどシャープではないが、握れば握るほど制動力が立ち上がるフロントに対して、リヤは制動力の効き始めが若干ぼやけているが、許容範囲。もしものときの急制動にはABSがしっかり作動してくれるだろう。スリップコントロールやパワー特性の制御などといった電子制御を装備していないW230だが、別に不安を感じず走り回れるのは、わずか18psという232ccエンジンのせいかもしれないが、この簡素さと気軽さ、ほどほどのエンジンパワーと車体の挙動のパッケージがバランスしているからかもしれない。 そして車格も含め、W230はエントリーユーザーや小柄な女性ライダーにもおすすめできるものの、ベテランライダーの気軽な足、不意に思い立って出かけるようなツーリングの相棒としても、その健気な性能に愛着を持てそうな1台に仕上がっているのだ。