【ABC特集】ありがとうの言葉を燃料に・・・ 関西随一の豪雪地帯を走る移動販売「あったか便」に密着
移動販売の意義のひとつ「見守り」
中上さんは生まれも育ちも長浜市。地元に詳しく、宅配や店舗での経験も豊富なことから、あったか便のドライバーに抜擢されました。慣れた様子ですが、実は移動販売の経験はまだ10カ月ほどなんです。それまでのおよそ10年間は、地域の住民でつくる団体などが移動販売車「カエル号」を運営していました。しかし、担い手不足や、車両の老朽化といったさまざまな問題が重なり、継続することが困難に。そこで、手を挙げたのが「コープしが」だったのです。 中上さんは移動販売「あったか便」にやりがいを感じる一方で、心を締め付けられることもあると言います。 (中上さん)「春から何人かお亡くなりになってしまって。先週しゃべったのに『えっ』てなることもあって」 食料品などを届ける以外にも移動スーパーには重要な役割が。それが地域の「見守り」役です。 (中上さん)「魚は・・・?肉は冷蔵庫いっぱい?」 (地域住民)「冷蔵庫、冷凍庫にいっぱい」 何気ない会話からお客さんの生活に変化がないか、探ります。停車する場所にいつも来る人がいなければ、家まで声を掛けにいくことも。 (中上さん)「先週は雪が降ったから出てこられなかったけど、今日は来てくれたから元気なんやなとか、そういうことが分かりますね」
いまや移動販売は市街地でも要望が
こうした移動スーパーを必要しているのは、いまや山あいの地域だけではありません。 2月11日、長浜市南部の神田地区でイベントが開かれました。あったか便の「買い物体験会」です。住民たちからの要望であったか便の2号車が導入され、2月下旬から神田地区も回ることになったのです。これは便利になってよかった・・・と思いきや、この神田地区はコープながはま店から車でわずか5分ほどの場所。なぜここに「あったか便」を? (神田まちづくり協議会・小川幸男会長) 「単純に言うと単身の高齢者世帯が増えてきていて。頼んだりするのが気が引ける人とかもおられたりするので。それだったら自分で歩いていって、好き勝手にお買い物できる場所がなんとかならんかなという」 車で行けば5分のところも、足腰に不安のあるお年寄りにとっては買い物圏外。高齢化に歯止めがかからないいま、市街地に住んでいるからといって将来も買い物に不自由しないとは言い切れないのです。
(中上さん)「大変なことは大変です。でも、おじいちゃんやおばあちゃんのニコってした顔を見るとね、癒やされますよ。原動力になりますよね。ありがとうっていうことばをやっぱりいただくとね。行きはこの中にいろんな商品を積んでいきますけど、ありがとうの声を積んでお店に帰りたい」 ありがとうの言葉を燃料に「あったか便」はきょうも走ります。