「絶対に必要」と信じたが、解約──コロナ禍で“さよならオフィス”は現実となるのか【#コロナとどう暮らす】
「いま、オフィス需要に変化が起きています」 「まず、増床・拡大の傾向に『待った』がかかりました。質の面でも起きています。これまでオフィスに求められてきた『作業』『交流』『保管』の3点です。これからは、『作業』の点が後退して、『交流』と『保管』の意味が大きくなっていくのではないでしょうか」 どういうことなのか。 「リモートワークの普及で、作業に集中するだけなら自宅や社外のどこかでできることがわかりました。ただ、交流はそうはいきません。オンライン会議だけでは限界があります。機密書類やデータ、機材を保管する場所もまだまだ必要です。この意味で、交流と保管が大きくなっていくのではないかと」
変わるオフィス需要。流れは大企業にも波及するのか。不動産情報大手の関係者は言う。 「たとえば来月からとか、来年の春からですとか、大企業がスピーディーに決断するのはそう簡単なことではありません。オフィスにかけているコストが大きいですから、決断は経営判断になります。また、オーナーとの間で複数年契約を結んでいますから、フットワークは重くならざるを得ない」 対して、前出のツクルバの中村さんはこう言うのだった。 「確かにそうだと思います。ただし、この変化は身軽な企業から始まって、今後何年もかけて企業文化に浸透していくんだと思います。いま、大企業でフリーアドレス制を実施し、社屋に社内外の人が使えるコワーキングスペースを設けることも珍しくありませんよね。元々これらは、小さなスタートアップ企業から始まったもので、10年前ならあり得ないことでした。これと同じように、オフィスの変化が進んでいくのではないでしょうか」 長らくオフィスは社員からみて、会社への帰属意識の象徴だった。だからこそ「会社に行くことが仕事」という「常識」も生まれた。けれどもいま、それが揺らぎはじめている。