「絶対に必要」と信じたが、解約──コロナ禍で“さよならオフィス”は現実となるのか【#コロナとどう暮らす】
全社員がリモート勤務を始めてから、日々の業務に支障は出ていない。連絡はチャットかメールを使う。オンライン会議システムを使えば、複数人数で意思決定もできてしまう。この間、中途採用の社員が2人入った。先輩社員が業務の流れを説明するときに、円滑にいかないことはあった。お互い隣に座っているわけではないから、つきっきりで伝えることは難しい。
「でも、そう大きな苦労をすることもなく、解決できたんですよね」 PR担当の伊藤哲弥さんは言う。お互いに遠隔で画面共有できるツールを使い、テニスのラリーのようにチャットのやりとりを往復し、理解を深めた。普段以上に手数をかけることで足りない部分を補うことができた。 世間でリモートワークの導入に苦労する会社は多い。ところが、やってみたらあっけないほどカンタンにできてしまった。 島田さんの頭にこんなことがよぎる。社員全員でここに集まる必要はなかったのか――。 「実は、起業してからずっと、『オフィスは絶対に必要だ』と信じてきたんです。スタートアップ企業にとっては、なおさら重要なんだと」 7坪のマンションの一室で起業したあのころ、創業メンバーと対面で血の通ったコミュニケーションを続けた。部室のような雰囲気で、これこそが会社の文化をつくる上で重要だと考えてきた。
スタートアップ企業だからオフィスは大事。考えの基礎をつくったのは、本で読んだグーグル社の言葉だった。「オフィスは狭くしろ。そのほうがクリエイティブになれる」――。 「人と人との物理的な距離が近ければ近いほど、コミュニケーションの質も上がる。その分、新しい発想も湧いてくるということでした」
作業場は縮小。コミュ二ケーションに特化した場を
けれども島田さんの会社は、この先何年も「オフィスなし」を貫くわけではないという。 「来年なのか、このコロナ禍が落ち着いたころにもっと小さな場所を借りようと考えています」 オフィス解約にともなって、社員向けにこんなアンケートをとっている。 「フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが減ったことによる影響を教えてください」 半数からこう返ってきた。 「ややネガティブな影響が出ている(計測可能ではないものの損失を被っている)」