80代両親の死で〈ほぼ無職・親の年金頼り〉の50代兄から「お前のところに行く」と…押しかけ同居宣言を受けた独身・会社員の妹、絶望
令和のいま、家族のかたちは多様化している。なかには、いつまでも親離れ・子離れせず、お互い高齢になるまで生活を変えずに同居している例もある。だが、いつまでも子どもが親に養われていると、親がいなくなったとき、即座に生活が立ち行かなくなってしまう。実情を見ていく。 【早見表】国民年金・厚生年金「年金受取額」分布…みんな、いくら年金をもらっているのか?
50代で親と同居する独身男性、85万人
困ったとき、頼れるのはやはり家族だ。ケガや病気で収入が絶たれたとき、災害で住む場所を失ったとき、身を寄せられる親きょうだいがいたら、どれほど心強いことだろう。 「でも、どこまで助ける必要があるのでしょう…」 涙をためてうつむくのは、50代の鈴木優子さん(仮名)。鈴木さんは都内のIT系企業に勤務する独身の会社員で、いまは自力で購入した都内のお洒落なワンルームマンションにひとり暮らし。奨学金で有名私大を卒業し、がむしゃらに働き、ふと気づいたら、いまの年齢になっていたという。 「私が育った家庭は裕福でなく、両親は子どもの教育に熱心ではありませんでした」 鈴木さんは、そのような環境が嫌でたまらず、抜け出すには勉強するしかないと思い、子どものころからひたすら頑張った。 「しかし、両親は〈お前を大学にやるお金はない〉といって取り合ってくれませんでした。そのため、奨学金を借りて自分で大学を卒業しました」 鈴木さんには兄がひとりいるが、兄は母親から特別に甘やかされてきたという。 「兄のいうことは、なんでも無条件に聞き入れていました。専門学校がつまらないといっては中退するのも、就職先で〈オレの力をわかっていない〉といっては退職するのも、全部兄は許されてきたのです」 結果、〈実力を評価されない〉兄は無職に。以後はずっと年金生活の両親に養われ、気が向いたときに近所のコンビニでアルバイトをする生活を送ってきた。 2020年の国勢調査によると、親と世帯を同じくしている未婚の子は全国に3,283万人。そのうち、20歳以上に限定すると1,285万人だった。20代前半では360万人の独身の子が親と同居しているが、年連が上がるにしたがって減少し、50代になると100万人を割り、60歳以上になると36万人になる。 ◆年齢別「親と世帯を同じにしている子の数」 20~24歳:361.7万人(358.3万人) 25~29歳:220.9万人(218.7万人) 30~34歳:154.5万人(153.4万人) 35~39歳:128.0万人(127.4万人) 40~44歳:121.9万人(121.6万人) 45~49歳:125.1万人(125.0万人) 50~54歳:86.9万人(86.9万人) 55~59歳:50.8万人(50.8万人) 60歳以上:36.2万人(36.2万人) ※数値左より、親と世帯を同じくする子の数(別居含む)(親と世帯を同じくし、親と同居している独身の子の数) 男女別では、50代で親と同居する独身男性は85万人、独身女性は52万人。60代独身男性が23万人、独身女性は13万人。ただ、背景は一様ではなく、離婚して実家に戻ったケース、ずっと独身で実家を出たことがないケースなど、さまざまな事情があるといえる。 問題なのは「親の年金で養われている未婚者」だろう。本当なら働けるのに働かず、親に頼って生活している。現在50代後半だという鈴木さんの兄は、まさにこれに該当する。 「べつに会社員である必要はないと思うんです、まじめに働いていさえすれば。しかし、兄は賃貸暮らしの両親のアパートに同居して、最低限の仕事すらしていません。〈たばこ代だけ稼げれば十分だ〉といって、月数万円のたばこ代を稼ぐだけで、堂々と親の年金でご飯を食べています。本当に何を考えているのか…」 しかし、試練が鈴木さんの兄を襲う。両親が続けて亡くなってしまったのだ。