森保ジャパンは"贅沢な時代"?三笘薫・中村敬斗らアタック陣の、ワールドクラスに近い代物とは
試合を決めるゴールに、勝敗の行方を左右するプレー。記憶に残るシーンが生まれた背景には、選手たちの卓越した状況判断があった。取材歴30年のサッカージャーナリストが、状況判断に優れたシーンを振り返り、彼らが持つ共通点を綴った特別コラムを3回に分けて公開する。 第3回であるこの回では、森保ジャパンのアタック陣を例に、技術の幅がどう判断の土台になるかを解説する。 (引用:『サッカークリニック 2024年12月号』【特集】図解つき!サッカーの優れた状況判断PART4:特別コラム 状況判断に優れたフットボーラーたちより) 文/北條聡(サッカージャーナリスト)
|モダンフットボールにおける司令塔は今やセンターバック
もっとも、モダンフットボールにおける司令塔は今やセンターバックと言っていい。強豪チームが擁する彼らの立ち回りは、それこそアメリカンフットボールのクォーターバックに近い。本業の守備ばかりか、攻撃の初手となるビルドアップの局面でも極めて重要な存在となっているからだ。 とりわけ、スペイン勢はモダンなセンターバックの宝庫。この夏のEURO2024を制したスペイン代表のアイメリク・ラポルト(アルナスル=サウジアラビア)とロビン・ル・ノルマン(アトレティコ・マドリード=スペイン)のペアはもちろん、パウ・トーレス(アストン・ビラ=イングランド)も実力者で、スキルの高さが際立っている。 ライン間(守備側の中盤ラインと最終ラインの間)で待つ味方に縦パスをつけたかと思えば、最奥のライン裏へ走る味方に向けて、タッチダウンバスを繰り出すことも。また、ワイドに大きく張り出す味方を目がけて、高速の対角パスを放つのもお手のものだ。さらにつけ加えると、前方にスペースがあれば、ドライブ(ドリブルでの前進)を試み、やすやすとビルドアップの出口をつくり出す。 そもそも全軍(相手と味方の位置関係)を見渡せるポジションで、なおかつ相手のプレスはほぼ前からしかない。いつ、どこへ、どんなパスをさばくか、端から判断する際に有益な情報を集めやすい利点があるわけだ。それを活かしながら、幅と深さを意識したビルドアップのオプションを判断よく使い分けている。 近年、日本においても冨安健洋(アーセナル=イングランド)を筆頭に、伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン=ドイツ)や板倉滉(ボルシアMG=ドイツ)らの適材が続々と台頭し、日本代表を格上げする動力源となっている。余談ながら、この3人にはボランチからの転向組という共通点があり、ビルドアップにおける判断と技術に優れているのも納得がいく。