"2階級制覇"の寺地拳四朗が目指すボクサー像とは?「人間的な成長を表現するのがボクシング」
「最近は限界を感じていた部分もあったので、ボクサーとしてまだまだ成長できると思えたことはうれしかったですね。 最初は不安でしたが、試合が進むにつれて気持ちも落ち着いていきました。10、11ラウンドでは、ラッシュを仕掛ければ倒せるかなと思った場面もありました。『いったろうか!』とよぎったりもしましたが、無理にいかんでもいいかなと気持ちを抑えました。 倒し倒されの殴り合いをすることよりも、最後まで冷静に勝つことをテーマに、ブレずにやりきる。そう決めてリングに上がりました。倒すためのアクションは起こしても、過度な期待はしない。 相手に対しての具体的なプランを決めなかったことで、逆に増やした技術の引き出しをたくさん開けることもできました。 試合が終わってダメージが少ないとやっぱいいですね。フライ級転向初戦に勝利したことはもちろんですが、自信を取り戻せたという意味でも大きな転換点になりました」 ■拳四朗の感覚に任せる場面が増えた フライ級転向初戦で完勝し、2階級制覇を達成した拳四朗。しかし前戦、今年1月のカルロス・カニサレス(ベネズエラ)戦では、顔中あざだらけになる苦戦を強いられる薄氷の判定勝利(2-0)だった。 プロ唯一の敗戦となった矢吹正道戦以降、ステップワークを駆使したアウトボクシングスタイルから、「肉を切らせて骨を断つ」という言葉で表現されるような激しい殴り合いを繰り広げて勝利を積み上げた。 しかしカニサレス戦の苦闘を見たファンや関係者からは、ダメージ蓄積の不安や32歳という年齢から、限界なのではないかとの声も少なからず聞こえてきた。 試合後は慢性的に痛みの生じていた右拳(こぶし)を手術。フライ級転向を発表したものの、休養している間にWBA王者のユーリ阿久井政悟(あくい・せいご 倉敷守安)、トニーことWBO王者アンソニー・オラスクアガ(米国/帝拳)に注目が集まるようになっていた。 しかし今回、元世界王者の強豪ロサレス相手に見事なパフォーマンスを発揮して勝利し、フライ級戦線でも主役であることを存分にアピールした。