"2階級制覇"の寺地拳四朗が目指すボクサー像とは?「人間的な成長を表現するのがボクシング」
拳四朗が「加藤さんに言われたとおり戦えば絶対に勝てる」と絶大な信頼を置く陣営の参謀、長年コンビを組む三迫(みさこ)ジムの加藤健太トレーナーは、フライ級転向初戦の完勝についてこう答えた。 「右拳の手術をしたことで、結果的に試合間隔が空きました。それが良かったのかなと思います。 17年5月に初めて世界チャンピオンになってから、コンスタントに試合を決めていただけました。ありがたい半面、自分自身も含めて、個々の相手に対する対策を考えることで精いっぱいになってしまい、拳四朗のボクサーとしての成長に向き合える時間はなかなか取れませんでした。なので、拳の手術による休養は、拳四朗にとっては必要な時間だったと思います。 最近は自分からの指示を減らして、拳四朗の感性を信じるようにしています。 拳四朗は『ここで攻めろ!』と指示すればそのとおり動いてくれます。でも本人はまだ攻める距離感ではないと感じているかもしれない。拳四朗は自分の感性を、どこかで抑えてボクシングをしていた部分もあるのではないか。トレーナーである自分が指示を出してそのとおり動くことで考えなくなってしまい、アイデアも生まれなくなってしまっているのではないかと反省した部分もありました。 もちろん指示は最善の判断と思い伝えていますが、意外と拳四朗の感性を信じたほうがうまくいくこともあって、それが今回の試合ではより見えました。あれこれ言わず、拳四朗の感覚に任せたほうがうまくいく場面が増えてきたことは、すごく良い状況だととらえています。 年齢的にも終わりを示唆するような発言も聞こえてきましたが、自分から見れば伸び代だらけです。スパーリングではできても試合では出せていない技術もありますし、今回の試合を踏まえて修正すべき点もあります。拳四朗はまだまだ強くなれるのに、『何言っているの』という感じです」 ■4団体統一以上に大切にしたいもの 拳四朗がフライ級で目指すのは、ライトフライ時代は階級最強と評価されながらも機会に恵まれなかった4団体統一王者になることだ。 前述したようにWBA王者はユーリ阿久井政悟、WBO王者はトニーと国内ジム所属選手で、両者とも拳四朗との対戦には前向きな姿勢を示している。IBFフライ級の現王者であり8月にタイトル獲得したアンヘル・アヤラ(メキシコ)の動向は気になるが、マッチメークに関しても、ライトフライ級時代よりも良い風が吹いているように思えた。 目標達成のために必要なこと、大切にしたいことは何かを拳四朗に聞いた。