国民無視の「年収の壁」には、もううんざり…!厚労省の「悪手」と財務省の「経済音痴」で野ざらしにされるこの問題に、私が一石を投じます!【経済学者の提言】
厚労省が示した「最低の対策」
例えば、国民民主党の「103万円の年収の壁」撤廃が話題になると、厚労省は、事業所の規模によらず、週20時間以上働くすべての労働者から社会保険料を取って、106万円や130万円の壁をなくすと言い出した。 週に20時間働くと保険料を取られるのなら、働き手は働くのを週に19時間以内にひかえるようになるだけだ。 しかも、週20時間、年に50週働いたとしたら、時給1060円なら年に106万円の収入になる。これでは106万円の壁とほとんど同じで何の解決策にもなっていない。手取りを増やそうという国民民主党の主張に対して、壁をなくして手取りを減らす政策で、よくぞこんな案を出してきたものだ。 社会保険料は106万円を超えれば、所得のすべてから14.74%を徴収する。所得税が103万円を超えた分にだけかかるのに対して、所得全体から根こそぎ徴収しているのである。 社会保険料も基礎控除の考え方を踏まえて、所得から106万円を引いた金額から徴収するようにするべきだ。 基礎控除は、基本的な生活をするための所得に課税してはならないという憲法上の要請から発しているのだから、そこから社会保険料を取るのは憲法違反だと私は思う。 これに対して、社会保障の専門家は、社会保険料はその対価を、例えば「将来の年金として受け取るのだから、税ではない」と強弁するらしい。しかし、現在の現役世代が払っている社会保険料の多くは、その世代のためではなく、現在の高齢世代のために使われているのだから対価性などないに等しいではないか。 そもそもの話だが、保険料に対価性があるから基礎控除を入れないというのであれば、税には対価性がないという話になる。それでは、政府は国民からただ税を取り立てるだけの悪代官ということではないか。財務省は、なぜ社会保障の専門家に怒らないのだろうか。
財政学者は「壁」の問題に向きあっているか?
税は累進的に課税されるから、税金をたくさん払っているからといってより多くの対価がある訳ではない。しかし、国民全体としては、あるいは、平均的な所得の人にとっては、税と国のサービスは対応していなければならない。 実際に、「国防」、「治安」、「教育」、「道路・橋」、「防災」など国民は政府のサービスを受けており、税とそのサービスは対応していなければならないはずだ。 原則に則って考えることが大事である。社会保険料も税として捉えれば、究極の悪税である。この悪税は、所得から基礎控除を差し引いたものに課すことによって普通の税となる。所得から基礎控除を差し引くのは憲法上の要請である。護憲派がなぜこれを要求しないのか不思議な話だ。 ちなみに、財政学の教科書には、税の中立性が阻害される例として、1975年に大ヒットした「およげ!たいやきくん」のレコードが挙げられている。 当時は物品税があり、歌謡曲のレコードには15%の物品税が課せられていたが、童謡のレコードには課税されなかった。すると、大人にも売れる曲を童謡として販売しようとすることで資源配分が歪むなどと書いてあるのだが、まあどうでも良いことだ。 それよりも社会保険料が労働供給を歪めることこそが最大の中立性の歪みである。財政学者には、もっと重要な問題を議論して欲しい。
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