無名のチームを「ニューイヤー駅伝」出場に次々導いた〝凄腕〟監督の激レア人生 選手実績ゼロ、派遣社員、給与未払い、リストラ…
1月1日に開催されるニューイヤー駅伝は「実業団・駅伝日本一決定戦」とも呼ばれる国内最高峰のレース。2024年の出場チームも旭化成やHondaといった強豪がひしめく中で、創部わずか2年目の企業チームが初出場する。天然水の製造・販売で知られる「富士山の銘水」(山梨県富士吉田市)だ。 【写真】全日本実業団駅伝、小山が6区に 元日、塩尻と田沢は3区
監督は高嶋哲さん(45)。選手としての実績はゼロ。教師や派遣社員を経て指導者となった異色の経歴の持ち主だが、監督としての実績はすごい。過去には市役所チームや無名企業のチームをニューイヤー駅伝出場に導いた。今回で3チーム目だ。 これまで、一体どんな人生を歩んできたのか。話を聞くと、行く先々で何度もトラブルに巻き込まれ、そのたびに周囲に支えられて再起。「私は運が良かった」と語る、その半生とは。(共同通信=岩井惇) ▽憧れたのは選手ではなく「マネージャー」 千葉県で育った高嶋さんが駅伝に目覚めたのは中学時代。「『早稲田大』対『山梨学院大』という構図が好きだった。山梨学院にはマヤカさんや飯島理彰さんもいて、憧れていました」。高校の体育で使うジャージには「ステファン・マヤカ」と書いたほど。 陸上を高校で始めたが、「全然、遅かった」。そんな時、箱根駅伝のドキュメンタリー番組をTVで見て衝撃を受けた。
「山梨学院のマネージャーが特集されていたんですよ。ここで陸上競技を勉強したいと思いました」。マネージャー志望で大学に入ったが、体育会のマネージャーは忙しい。選手のサポートや練習の手伝いといった一般的な業務だけでなく、高校生のスカウトに1人で派遣されることも。 「監督から現金だけポンって渡されて『行ってこい』って」 時刻表とにらめっこしながら全国を飛び回った。当時の監督は上田誠仁さん。叱られることもあったが、人間として大きく成長させてくれた。 ▽教師になったものの…給与未払い、再就職先は不祥事 卒業後、千葉県の私立高校で陸上部の顧問として教師生活をスタートさせた。夢をかなえたかに見えたが、学校は問題が山積みだった。 「経営が破綻していて、給料がすごく安かったんです。未払いもありました。賞与も1回も出ません。同僚の先生が生徒に手を出して新聞に載ったり、警察沙汰にも何回かなったりして。ここでいくら頑張っても無理だなと」