串打ち3年、裂き8年…削りは「10年」/THE PROFESSIONAL Vol.2 岩國誠之(ウェッジ担当ツアーレップ)
岩國氏は、すでにボーケイ氏のような職人の域に入ってきているのではないか。「ボーケイさんに言われているのは、10年やって一人前。ですから、8年ではまだまだですよ」と謙遜する。「でも本当に10年経ってそこがようやくのスタートラインだと思っています。米国の工場に行くと、17年くらいウェッジを削っているメキシコ人の職人に会うんです。時折プロのオーダーも削っている人で、とにかく速くて上手い。口笛を吹きながらチュッチュッチュッと削っていく。『うわっ、速っ!』って(笑)」。世界を見渡せば、上には上がいるわけだ。 特に師匠でもあるボーケイ氏の仕事には、毎回新鮮な驚きがあるそう。「もちろん削りの技術は絶品ですが、それ以上に驚くのは『選手のここに当たる』というそのピンポイントの場所の見極めがすごい。実際に選手のフィーリングと削る場所が狂わないというか、まだその境地には行けないですね。今はようやく、その一端が分かってきたくらいですかね」
うなぎ職人は「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」と言われる。ウェッジの削りを極めるのも同様で、気の遠くなる年月の必要性を感じた。また5年後、10年後、岩國氏に胸の内を聞いてみたい。(構成・編集/服部謙二郎)