串打ち3年、裂き8年…削りは「10年」/THE PROFESSIONAL Vol.2 岩國誠之(ウェッジ担当ツアーレップ)
川村はときに1番アイアンを試したり、アプローチウェッジ相当の52度をMBアイアンのロフトを寝かせたヘッドにしたり、ツアー屈指のアイデアマンとして知られる。レップも全力でぶつからないと、彼の要求に応えられないのだ。実際にその日も「52度のウェッジの鉛を貼り直しに来ました」と、バックフェースにはバランス調整のための鉛がべったり。こうして微調整してもらっているわけだ。 2人で米国のタイトリスト本社に行った時のエピソードも面白い。「川村プロが100ydを打った時のターフが深すぎて、『こんなに穴を堀ったやついないぞ』って、ボーケイさんにもすぐ覚えられたんですよね(笑)。その後、ボーケイさんが川村プロのウェッジを削ってくれると言って、彼のエースのウェッジをどんどん削っていくんです。『もうちょっと行けるぜっ!』みたいな感じでガーっと。『おいおい、大丈夫か?』って2人で顔を見合わせてヒヤヒヤしていたんですが、打ってみたらすごく良かった。『やっぱりボーケイさんはすごいね』って2人でうなずいていました」
トレンドはローバウンス
8年間も担当していると、ウェッジのトレンドの変化もよく分かる。「結構、今はローバウンス化していますね。ボールだけ拾うような打ち方の選手が増えてきている」。打ち方が変わり、クラブに求めるものも変わってきている。「米国の打ち方のスタンダードが変わって、ヘッド軌道もシャローで浅くなっている。そうなるとバウンスが邪魔になります」。そのトレンドが日本にも入ってきている。「ローバウンスが増えてきました。僕が担当を始めたころは8度以上のハイバウンスが多かったですが、今は4度や6度が主流です」 PGAツアーで働くツアーレップとのやり取りも活発で、世界中のウェッジチームとの会議もよく開かれているという。「会議メンバーにはボーケイさんもアーロンもいて、それ以外にも米国のクラブ開発チーム、ヨーロッパ、韓国、オーストラリア、南アフリカなど10人くらいでいつも意見交換しています」。つい先日も、日本ツアーでのSM10の使用状況を報告したばかりだ。