串打ち3年、裂き8年…削りは「10年」/THE PROFESSIONAL Vol.2 岩國誠之(ウェッジ担当ツアーレップ)
仕事が“180度”変わった
日大ゴルフ部出身の岩國氏が「アクシネットジャパンインク」(タイトリストの日本法人)に入社したのは16年前。いきなりウェッジ担当になったわけではない。当初はウッドやアイアンなどの組み立ても含めた用具全般を取り扱うツアーレップだった。それまでクラブを組んだことがなく、「バランスって何ですか?のレベル」(岩國氏)からのスタート。「当時、栃木にあった工場に2週間泊まり込みをして、ベテランの方にクラブの組み立てをイチから教わりました」と、少しずつレップの“イロハ”を学んでいったという。 もともとクラブ好きだったこともあって仕事を覚えるのは早かったが、男子下部ツアーの現場に出るようになると学ぶことは山のように増えた。「グリップの向きやライ角、ロフト角とか、契約選手たちから『全然ダメ』と突き返されて。丸山大輔さん、S.K.ホ(韓国)さん、谷口拓也さん、松村道央さん…。当時はクラブにこだわりの強い選手が多かった。やり直しも多くて大変でしたが、いま振り返れば結果的に鍛えられたのかなと思っています」
転機は8年前に訪れた。「急にウェッジ担当になって。もう、ドライバーやアイアンを組むのとは180度くらい違う作業で、面食らいました」。クラブの組み立てに慣れ始めていたタイミングで、ウェッジの世界は別物に映った。「ドライバーって、正直そこまで何もできないんですよ。そこにある製品でどうにか調整する程度。でもウェッジって、削りも求められるし、カオもいじれるし、一番いろいろ調整できるクラブ。ですから、レップの腕次第で何とでもなってしまうんです」。やりがいもあるが、責任も大きい。「特に削りの作業が難しかったんですよね。これはちょっと今までのやり方じゃラチが明かないな、と」。それまでの仕事のルーティンを変える決断をした。 まず、出社時間を2時間半早めた。朝早くから研磨機の前に座り、削りの練習。「もちろん前任から削り方は教わりましたし、一度米国でボーケイさん(ボーケイウェッジの生みの親であるボブ・ボーケイ氏)にも直接教わりました。それでもウェッジの削りって、みんなそれぞれのやり方があって、最終的には自分のやり方を見つけなければいけない。グラインダー(研磨機)をどのくらいのスピードで回せば、どういう風に削れるのか。ソールをどう当てれば、どう削れていくのか。その“機微”は自分で削りながら学んでいくしかなかった」。再び修業が始まった。