「安さだけ」とは言わせない!“しまむら”イメージ激変の商品改革
その中でも隠れた人気商品となっているのがスリッパ。「FIBER DRY さらっとドライスリッパ」(539円)のシリーズは、今年だけですでに150万足以上が売れた。旭化成が開発した特殊なメッシュが抜群の通気性を生み、ウレタン入りでクッション性も高い。 しまむら社長・鈴木誠(59)は「しまむらの強みの基本は商品力です。いかにいいものを作ってお客様に来ていただくか。これは商売の王道中の王道。これを見直していくことが一番重要だと思います」と言う。 商品力をどうやって磨くのか。スリッパのリニューアル現場にカメラが入った。検討していたのは履き心地の改善だ。 新たにクッション材を入れるというが、チーフバイヤー・東恭平は「1ミリ違うと履き心地が全然違う」と言う。しまむらのプライベートブランドは必ず毎年、改良を加えている。 スリッパは5年続けてリニューアル。裏地までメッシュ加工にして蒸れにくくしたり、メッシュの編み方を変え肌触りを向上させたりしている。 「毎年毎年、究極の履き心地だと思って展開しているのですが、履き心地の改善を継続して行い、その価値が伝わるものづくりができれば、お客様も納得していただけるかなと思っています」(東) 鈴木は商品力を強化することでしまむらをV字回復させ、過去最高の売り上げ6350億円を達成した。 「商品とはお客様が欲しいもの。お客様が欲しいものに特化したとがった商品を入れなければいけない。その中でしまむらの持ち味をアピールしていく」(鈴木)
最強アパレルチェーンの栄光と転落~反転のきっかけは意外なひと言
現在、鈴木が推し進めているのが都市部への出店だ。渋谷の商業施設「渋谷モディ」の中には期間限定の店舗をオープン。10代から20代の若い女性をターゲットに商品をそろえた。値段も若者が気軽に買える価格にした。バッグも2000円以内で手に入る。 この店舗の商品をそろえたチーフバイヤーの岩﨑伸也は、「今までしまむらに来ていなかったお客様、新しいお客様の獲得が大きな狙いです。都市部にポップアップストア(期間限定の店舗)の出店を進めて今後に生かしていければいいと思います」と言う。 今後3年で150の出店計画があるが、その中で都市部を狙っていくと言う。 しまむらのルーツは1953年に埼玉県で株式会社となった「島村呉服店」。低価格と豊富な品ぞろえで客をつかみ全国に店舗を拡大。ついには国内店舗数日本一の巨大アパレルチェーンとなった。カンブリア宮殿には2013年に登場。自前の物流拠点を持ち機械化と省人化を徹底。コストをかけない経営で成長を続けた。 だが、ネットショップの台頭などの影響を受け、2010年代の後半から売り上げは次第に低迷。3期連続の減収減益となった2020年、立て直しを託されたのが鈴木だった。 「一言で言えばどん底で崖っぷち。もうやるしかない、前に進むしかないと」(鈴木) 社長に就任した鈴木は管理職2000人を集めた会議で社員を驚かす行動に出る。「この3年間の経営方針は間違っていました。申し訳ありませんでした」と謝ったのだ。 会場はザワついた。実際にその会議に出席していた社員は「あの言葉は想像していなかったです。経営陣はこういうことを言うんだと思いました」(広告宣伝部・岡田咲希)、「これまでそういう発言をされた社長はいなかったので、面食らったというか、びっくりしました」(商品6部・池田由佳梨)と振り返る。 「謝って次に行く。これを社長としてやるのがけじめであり、反転のきっかけだったかもしれません。変えてはいけないことを元に戻す。変わらなければいけないものを変えていく。この2つをきちんとやっていこうと」(鈴木)