【追跡】“日本式醤油”をインドへ!母国に“醤油作り”広めるインド人女性と日本の醤油メーカーが奮闘「将来的には他国にも輸出目指す」
インドに渡り醤油作りを実験
アバンティカさんが来日してから約2カ月が経った2023年11月、「ちば醤油」の飯田恭介社長と2人の技術者がインドを訪れ、日本式醤油を作るための調査を開始した。 まずは、ニューデリーにある工場の一角を借り、インド産の大豆と小麦を使用した醤油作りが可能かどうか、アバンティカさんが経営する店のシェフやマネージャーと共に実証実験した。 一緒に醤油作りを行ったインド人について、飯田社長は、「インドは階級社会が残っていて、仕事にも役割分担がある文化だが、今回は作業も日本式。皆で一緒に作業した」と話していた。 また実験の中で、社長を最も悩ませたのは、麹作りだったという。 飯田社長は、「日本式の良い醤油を作るためには、「麹」の出来が品質を大きく左右する。麹作りでは、適正な温度と湿度の管理が欠かせない。また「麹」は非常にデリケートなので、異菌や雑菌が繁殖しない環境を整えることが必須となる。手間と技術を要する大事な工程だが、インドの方に短時間で理解して習熟してもらうのは熱量のいる仕事だった」と話した。 そのため飯田社長らは麹作りや発酵状態を確認するために、2023年11月から3カ月連続でインドを訪問。2024年には、さらに5回現地を訪れ、実証実験を進めた。 そして2024年9月末、2023年11月に仕込んだ醤油のボトリング作業が行われ、初めての日本式醤油が約250リットル完成した。醤油の完成をうけて、飯田社長は「本当に嬉しかった」と話す。また、醤油の出来栄えが期待以上に良好なため、完成した際にはインド側のスタッフは、ちば醤油のスタッフよりも喜んでいたという。 2024年10月には、アバンティカさんが経営するレストラン「KAMPAI」で、日本式醤油の完成を記念したお披露目パーティーが開かれ、約130人の参加者に、醤油を使った7~8品の料理が振る舞われた。 この醤油で巻き寿司を食べたインド人女性は「今までのインドの醤油とは香りが全然違う」と話していた。またインド人の料理人も「今までのインドの醤油とは違う。いいですね」と好感触だったようで、アバンティカさんも醤油完成の喜びと共に、関係者への感謝を述べたという。 飯田社長も「インドではまだ醤油の認知度が低い。しかし今回、日本料理を扱うインド国内のホテルやレストランから良い評価をいただけたことがとても嬉しい」と手応えを感じた様子だったようだ。