米司法省「グーグルにクローム売却要求」が歴史的事件といえる理由 IT業界にこれから大転換の時代がやってくる
アメリカの司法省は、Google(グーグル)が展開するインターネットブラウザ「Chrome(クローム)」の売却を裁判所に請求した。その背景と今後の展開について、IT業界に詳しいKDDI総合研究所リサーチフェローの小林雅一氏に聞いた。 【動画で見る】米司法省がChrome売却を要求/反トラスト法(独占禁止法)抵触/2000年に分割の是正命令が出たMicrosoftとの違い/テック業界への影響は? ■「消費者が不便を強いられている」という判断 ――そもそも司法省は何を問題視しているのでしょうか。 もともとは2020年10月、グーグルが検索サービスを独占しているとして司法省が反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴した。グーグルは自社の検索エンジンをスマートフォンの初期設定にしてもらうために、年間260億ドルぐらいの金額をアップルやサムスン電子など他社に支払っていた。
それによって消費者の選択肢が狭まる。検索エンジンはほかにもあるが、グーグル検索しか使えなくなってしまうので消費者はそれによって不便を強いられている。だから司法省は問題視して訴えたわけです。 今年8月にその判決が下って、グーグルが敗訴した。ただしその時点ではどういう措置を適用するかは決まっていなかった。その措置について、今回司法省がいろいろ要求した中で注目を浴びたのがクローム売却でした。 ――グーグルにとってはかなり厳しい内容ですよね?
司法省が要求したとしても、裁判所がすべてを認めるとは限らない。だから、とりあえずいちばん厳しい要求を最初にしておいて、お互い妥協して、最終的に落ち着くところで落ち着くというのを狙っているのだろうと思います。 ――クローム売却となった場合、グーグルの事業にどんな影響があるのでしょうか。 かなりの影響があります。ブラウザー市場に占めるクロームの割合は60~70%ぐらいといわれている。クロームを使えば、グーグルの検索を使うことになって、グーグルには広告収入が入ってくる。クロームが売却されると、グーグル検索を利用する人が減り、広告収入も減ります。