米司法省「グーグルにクローム売却要求」が歴史的事件といえる理由 IT業界にこれから大転換の時代がやってくる
それだけではなく、検索によってグーグルはいろいろなユーザーのデータを得ている。そうしたデータは生成AIの開発などにも非常に役立つわけですが、それも減るわけです。 つまり未来のグーグルのビジネスにもそうとう悪影響があるということで、かなり注目されています。 ――クロームの買い手としては、どういった企業が想定されるのでしょうか。 他のIT企業かもしれないが、司法省としては営利団体ではないところが、お金儲けではなく研究開発目的で買収してくれるというのが望ましいと思っているのではないでしょうか。
■25年前のマイクロソフトの事例と似ている ――司法省は1998年に反トラスト法違反でマイクロソフトを提訴し、2000年に連邦地方裁判所がマイクロソフトを2社に分割する是正命令を下しています。その後和解が成立して分割は免れましたが、そのときと今回との違いはありますか? 似ています。マイクロソフトは、OS(基本ソフト)のWindows(ウィンドウズ)とブラウザのInternet Explorer(インターネットエクスプローラー、IE)の抱き合わせ販売が問題になった。
当時はNetscape(ネットスケープ)というブラウザが優勢だったのですが、マイクロソフトはパソコンメーカーに対してウィンドウズを搭載したパソコンを発売するなら、マイクロソフトは必ずIEを搭載してくださいと制限をかけた。それがいわゆる反トラスト法に違反しているということで司法省は訴えた。 ちょうどインターネットが新しい産業として盛り上がってきていたときで、マイクロソフトは自社のブラウザを無理やり消費者に使わせることによって、これからのインターネット市場で権益を確保しようとしたわけです。
グーグルもAndroidやクロームを使わせることによって、当面は検索エンジンのシェアを確保しようとしている。 さらにこれから重要になってくるのはAIですよね。今回のグーグルの件も最初は検索エンジンから始まった訴訟だったのですが、いつの間にか議論がAIにすり替わった。 公判の途中でもそれは明らかになってきていて、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが証言台に立ったのですが、彼は途中からAIの話を始めた。今のグーグルの状況を野放しにしておけば、彼らはどんどんデータを集めて、これからのAI開発は検索と同様にグーグルの独占状態を作ってしまうだろう、と。