今季も絶好調の「ロエベ」、“童心“で服作りに挑む「ヨウジヤマモト」 2025年春夏パリコレ日記Vol.4
引き算とエモーショナルな要素に期待したい「イッセイ ミヤケ」
お次は、「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」でしたね。創業デザイナーの三宅一生さんが亡くなって以降、正直ちょっと精彩を欠いている印象があります。特に「着たい」と思う美しさやリアリティが薄れ、コンセプチュアルだったり気難しそうだったりのムードが色濃くなっている印象があります。今季は和紙にフォーカス。確かに新しい素材に挑戦するのは「イッセイ ミヤケ」らしいけれど、オーバーサイズのトレンチコートにセットアップのルックは明らかに紙で、これを着たいと思う人がいるかどうか?和紙で洋服を作るのではなく、和紙は混紡することでもっと美しい見た目を追求する選択肢もあったのでは?と思います。和紙を使っているからこそ、折ることで形を追求したクリエイションもありましたが、あれは本当に理想の形だったのかな?
中盤の複数の洋服を重ね合わせた洋服は、それこそ直前にショーを開いた「ロエベ」の2021-22年秋冬メンズ・コレクションを思い出してしまいました。端的に言えば、「イッセイ ミヤケ」に期待する、洋服の新しい形や可能性って、ああいうことじゃないんですよね……。一方、スキッパータイプのシャツドレスに軽やかなトレンチコートやジャケットなどのピュアホワイトのルックは、今季のトレンドにも即しているし、美しかった。しばらくは、変わった素材を使うならシンプルなシルエットなど、引き算を意識して共感性を高めた方が良いのでは?と思っています。
藪野さんは、どう思いますか?
藪野:そうですね。正直、ここ数シーズンはコンセプチュアルになり過ぎてしまっているように感じます。そのせいで、服において大切な“着てみたい“という気持ちを喚起しづらくなっているかなと。近藤さんの就任初期のように、純粋に楽しく、気持ちを明るくしてくれるようなショーが恋しくもあります。もちろん資料を見ると、麻の細かい繊維でできた麻紙や、古くから紙や衣類に使われてきたという大麻の繊維を用いるなど、コンセプトを掘り下げたクリエイションにこだわりを持って取り組んでいることがよく分かるのですが、そこにエモーショナルな要素が再び加わることに期待したいですね。