「政治とカネ」で惨敗の自民 見通せぬ野党との連携交渉 及川正也
自民党関係者が言う。「楽勝と考えられながら、公示後に厳しくなり、最後は接戦に追い込まれた候補が多かった」。牧島氏もその一人だったとされる。 2000万円支給問題の表面化後は、公然と執行部批判をする自民候補が増えたという。「そこまでやらないと有権者の理解が得られない」「仲間内で非難合戦をやっていては、勝てるものも勝てない」とあきれる地方議員もいた。 党内からの不満噴出を考えれば惨敗も当然だった。だが、どれだけ深刻に受け取っただろうか。投票翌日の首相の記者会見が注目されたが、目新しさはなかった。 まず、首相は「国政の停滞を避け、政治改革や経済対策などの課題を先頭になって取り組み、日本創生を実現してまいる所存だ」と述べ、続投を表明した。 衆院選の目標に掲げた「与党過半数」には及ばなかった以上、首相がその責任を取るのが筋だという声もあるが、それだけのエネルギーは党内には感じられない。 一方、少数与党として今後の政権運営で最も重要なのは国会対応だ。少数与党内閣は歴史的にも短命で、直近の1994年の羽田孜内閣は2カ月しかもたなかった。 首相は協力相手として今回、4倍の28議席を獲得した国民民主党を見込む。会見では「連立は想定していない」とする一方で、「よく協議する」と述べた。 国民民主党も気軽に乗れる話ではない。来年夏には参院選が控える。妥協すれば勢いを失う恐れもある。対決姿勢を保ちつつ、実を得る策を慎重に検討するだろう。 ◇内閣不信任案提出も 首相にとって時間は限られている。11月11日から3日程度の日程で特別国会を開き、首相指名や議会の構成を決定。その後、外交の晴れ舞台に臨む予定だ。11月15~16日にはペルーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)、18~19日にはブラジルでの主要20カ国・地域(G20)の各首脳会議に出席する。 日中外交筋によると、外務省はどちらかの会議の場を活用し、首相と中国の習近平国家主席との会談を設定するよう調整を進めているという。