親の介護が必要になったら?負担を軽くするコツとトラブル解決策
ある日突然、一本の電話で親の介護を知ります。子どもは、一報を受けて心配で右往左往するばかりです。 この記事では、親が介護になったときに、落ち着いて対応できる準備方法や親の介護を巡って、きょうだい間でのトラブルを回避する方法をご紹介します。
1.親の介護は誰がする? しないとどうなるのか
子どもには親の介護をする義務があるのでしょうか。自分の生活が苦しいのに親の介護をしないといけないのでしょうか。また、親の介護をしない場合は、どのような罪になるのでしょうか。法的な側面から、解説していきます。 (1)親の介護をするのは子どもの義務 親が介護が必要になった場合、子どもが介護をする義務はあるのでしょうか。民法877条1項では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と規定されています(参照:民法|e-GOV https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)。 「直系血族」とは、要介護者の直系の血族であり、具体的には、要介護者の祖父母、父母、子、孫などのことです。「扶養」とは、自力で生活を維持できない者に対して、一定の親族関係にある者がおこなう経済的給付を指します。 民法では、子どもには親の扶養義務があるとわかります。ただし、子どもが自分の生活で精一杯で余力がない場合はどうでしょうか。親の扶養義務は、あくまでも、子どもが自分の生活を切り下げることのない余力の範囲内での義務と考えられています。 扶養の方法は、原則として、経済的な支援であり、子どもは直接親の介護労働をしなければならないわけではありません。経済的な支援として、医療費・介護費用、施設の入居費用などが考えられます。また、子どもの間で扶養の優劣はなく、親の扶養義務は子ども全員が平等に負うことになります。 (2)親の介護を放棄すると罪に問われる可能性 親の介護を放棄するとはどのような行為でしょうか。介護放棄とは、親の世話をしないことです。介護放棄は虐待の一種で「ネグレクト」と呼ばれることがあります。例えば、次のような行為が該当します。 ●入浴させない ●水分や食事を十分に与えない ●汚れたおむつを交換しない ●部屋がきわめて非衛生で掃除もしない ●医療機関を受診させない ※参照:東京都高齢者虐待対応マニュアル p.4|東京都福祉局(https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/zaishien/gyakutai/torikumi/doc/gyakutai_manual.pdf) 子どもが親の介護を放棄した場合、刑法218条「保護責任者遺棄罪」に該当し、3カ月以上5年以下の懲役が科される可能性があります。さらに、介護を放棄したことによって、親が亡くなったり怪我をしたりした場合「保護責任者遺棄致死罪(3年以上20年以下の懲役)」「保護責任者遺棄致傷罪(3カ月以上15年以下の懲役)」が適用される可能性があります(参照:刑法|e-GOV https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045)。 (3)親の介護費用は、原則、子どもが賄(まかな)う必要はない 親の介護費用は、原則、親自身の財産から支払います。仮に、子どもが無理をして親の介護費用を負担した場合、どのようなリスクがあるでしょうか。子どもの家計が破綻したり、将来の老後資金などが不足してしまう可能性があります。 また、経済的な支援ができないからといって、仕事を辞めて親の介護に専念すると、生活費捻出のために子ども自身の貯金を切り崩し、さらには、将来もらえる厚生年金なども少なくなります。 親の財産がある以上、親の財産から介護費用は賄うことが大原則です。子どもは無理をせず、余力の範囲内で経済的支援し、介護費用を軽減する制度や自治体独自のサービスなどを積極的に利用することをおすすめします。