いま、ランナーの「厚底シューズ化」でケガ激増…その問題は「履き方」にあった！マラソンを「安全に楽しむ方法」を専門家が解説
近年、トップアスリートに限らず、多くの市民ランナーも履くようになった厚底シューズ。だが、ランニングコーチの金 哲彦さんは、厚底シューズ特有の高い反発力をうまく使いこなせずに、ケガや痛みに悩まされるランナーが増えていることを憂慮する。 【図解】たった3秒で…筋力が上がる「驚異の方法」はこちら！ 市民ランナーがケガなく走り、せっかくの厚底シューズの恩恵を最大限に受けるにはどうすればよいのか？ 前編記事の「マラソンの新常識…履くだけで「10分タイム」が縮む、厚底シューズの《スゴイ効果》と意外な弊害」に引き続き、『厚底シューズ時代の 新・体幹ランニング』からの抜粋・再編集によりお届けする。
カーボンプレートの反発力で歩幅が伸びる
厚底シューズでランニングエコノミーが改善する最大の理由は、その優れた反発力にあります。 厚底シューズとは、たんにソールが分厚いだけのシューズではありません。靴底(アウトソール)と足を包み込むアッパーの間にあるミッドソールに、カーブを描くカーボンプレート(炭素素材をミックスした板状パーツ)が挟み込まれています。 カーボンプレートの特質は軽量で強度が極めて高く、変形しにくいこと。ゴルフクラブのシャフトや釣り竿などの素材として重宝されてきた所以です。 厚底でも比較的軽量でありつつ(シューズが重たいほど、ランナーの負担は増えます)、体重の4～5倍もの着地エネルギーをソールに蓄えます。 続いて、蹴り出し時に体重が抜けるタイミングで、蓄えたエネルギーを一気に放出して板バネのような反発力を発揮。推進力を助け、それがストライドの自然な伸びにつながるのです。
キロ5分のランナーならフルのタイムが10分短縮
この“自然に”というのがミソ。頑張ってストライドを伸ばそうとするとフォームが崩れて無駄な力を使うため、ランニングエコノミーは低下します。 私の経験でも、厚底シューズを履いて自分のリズムで走ると、ストライドが5~10cm伸びる実感があります。ランニングのスピードを決めているのは、ストライド×ピッチ(回転数)。仮にピッチが同じでも厚底効果でストライドが伸びると、タイムは速くなるのです。 ここでちょっと机上の計算をしてみましょう。たとえばストライドが1mだとするなら、フルマラソンでは4万2000回着地します。そのストライドが仮に5cm伸びるだけでも、フルマラソンの距離が約2.1km短くなったのと同じ効果が得られます。 キロ5分(1kmあたり5分で走る)のランナーなら、これでタイムが10分速くなるという計算が成り立ちます。 厚底シューズでランナーが高速化している背景には、このような変化が関わっていると考えられます。
