センバツ高校野球 健大高崎、悲願達成 スタンド、大歓声こだま /群馬
第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)に2年連続7回目出場の健大高崎は大会最終日の31日、決勝で前回準優勝の報徳学園(兵庫)を3-2で破り、春夏を通じて初優勝を決めた。紫紺の大優勝旗を、初めて県内にもたらした。一塁側アルプス席で声をからし続けた約800人の生徒、保護者、学校関係者らは抱き合って喜び、涙した。【早川健人、来住哲司、小坂春乃】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 報徳学園は前回大会の初戦で、2-7で敗れた因縁の相手。佐藤龍月(りゅうが)(2年)が最後の打者を三振に取ると、一塁側アルプス席には大歓声がこだました。 63人の吹奏楽部員を率いて応援を続けた部長の水野吏音(りおん)さんは「感動です。野球部と一緒に頑張ってきてよかった」と笑顔で話した。控えの野球部員、加茂優太朗さん(3年)は「まだ現実か分からない。背番号はもらえなかったが、思いはベンチ入りメンバーに託していた」と涙をぬぐった。 石垣元気(2年)が準決勝に続いて先発。初回にいきなり2点を失ったが、一回裏2死一、二塁で森山竜之輔(3年)が左中間を破る2点適時二塁打を放ち、同点に追いついた。準決勝まで14打数1安打と不振だったが「バットを短く持ってコンパクトにミートすることを心がけた。うれしかった」。 青柳博文監督は先発した報徳学園の今朝丸裕喜(同)を「世代ナンバーワン投手」と警戒したが、三回1死三塁に高山裕次郎(同)の右前適時打で勝ち越した。高山は「インコースの直球。今朝丸の一番自信あるところに必ず来ると張っていた」と、してやったりの表情を浮かべた。石垣は粘りの投球で、六回2死二、三塁のピンチの場面も「自分の責任なので、三振を取りに行った」としのいだ。 1年越しの雪辱を果たし、2002年の創部以来の悲願だった「日本一」を達成した選手たちは「学校の歴史を作った」と胸を張った。 ◇知事、校長も歓喜 ○…一塁側アルプス席では、山本一太知事が加藤陽彦校長とともに応援した。優勝が決まり、加藤校長は「こんな日が来るとは。青柳博文監督は創部以来、長年苦労しただけに報われた」とうれし涙を流した。山本知事は「県勢初のセンバツ制覇という歴史的快挙を現場で見届けられた。知事としてこんな幸せはない。県の誇りだ」と喜んだ。 ◇「泣けた」「よくやった」 JR高崎駅で号外配布 健大高崎の優勝を伝える毎日新聞の号外が31日夕方、JR高崎駅で配られた。市民らが次々と号外を受け取り、「よくやった」「泣けた」と話し、選手たちの健闘をたたえた。号外で優勝を知り、「鳥肌が立った」と喜ぶ人もいた。 健大高崎出身で公務員の田村優海さん(23)は「本当にすごい」と満面の笑みを浮かべた。在学中に吹奏楽部員として甲子園で応援しただけに「勝利の瞬間は涙が出た」と話した。【田所柳子】 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇九回登板、気持ちで投球 健大高崎 佐藤龍月(りゅうが)投手(2年) 「指の痛みも少しあったけど、最後の1回なので気持ちで投げよう」と、九回から登板した。四球と盗塁で一打同点のピンチを招いたが、「スライダーがうまく曲がってくれた」。最後の打者を三振に取ると、仲間たちがマウンドへ走って来るのが見えた。 エース左腕は今大会で、1回戦から3試合に先発した。アクシデントが起きたのは、準々決勝(28日)の山梨学院戦。左手中指のまめが破れ、五回を投げ切って降板。試合後は病院へ行って治療を受けた。 準決勝と決勝は右腕の石垣元気(2年)に先発を譲ってベンチで戦況を見つめ、終盤に救援した。 初めての甲子園ながら、決勝までの5試合で計22イニングを無失点。「走者を出しても平常心で、自分なりにいい投球ができた」。バッテリーを組む箱山遥人(はると)(3年)も「信頼できる投手に成長した」と評価した。 中学3年で侍ジャパンの15歳以下(U15)日本代表に選ばれ、国際試合でも活躍した。将来の目標は「高卒でプロ」だが、まずは9年ぶりの全国高校野球選手権大会出場と春夏連覇を目指す。【早川健人】