最悪の事態は「トーキョーパンデミック」? 「不公平」五輪、強行開催なら「白いメダル」を
スポーツ資本主義のストレス
しかしそれは最悪の場合であって、もちろん何もかもがうまくいく可能性もある。感染もさほど広がらず、オリンピックも思ったより盛り上がるかもしれない。だが、そうなったとしても、良かったと胸を撫で下ろすのは日本人ぐらいではないか。世界の多くの国では(日本もそうだが)今なお非常事態がつづいているのだ。 日本はかつて、国民の命を神風に託して突き進んだ経験があり、今は、全世界の人々の命を幸運(神風)に託しているように思える。結果としてうまくいったとしても、日本はそういう神頼みの国だという印象が、世界の人々の無意識のうちに永く残って、ボディブローのように効いてくるような気がしてならない。「科学技術の国」というイメージは、遠い過去の話になったというのか。 思い起こせば、ロゴマークの盗用疑惑、国立競技場設計案の白紙撤回、誘致における贈賄の疑惑、猪瀬、舛添両元都知事の相次ぐ失脚、森組織委会長の失言退陣、そして折から報道されたJOC経理部長の自殺と思われる死と、このオリンピックは呪われたように御難つづきだ。 また最近、テニスの大坂なおみ選手が、会見を拒否して全仏オープンを棄権した。うつ症状に悩まされていたという。健康健全であるべきスポーツが、メディアにのって宣伝に使われまたそれ自身商品化して、巨大なマネーが動くようになった。前にも書いた「スポーツ資本主義」である。大坂選手のデリケートな神経には、その非人間的なメカニズムがストレスとなっていたのだろう。多くのテニス選手も他のスポーツ選手たちも同情を示しているのは、そのストレスを共有しているからに違いない。 東京オリンピックは、IOCとアメリカのメディアの都合で、過酷な日本の真夏に開催するということで、すでに選手の健康は危機にさらされているのだ。そこにコロナ禍が追い討ちをかけている。僕が選手(特に外国の)だったら「いい加減にしろ」といいたくなる。