ブランド刷新で「ジャガーは終わった」のか? むしろテスラ並みの注目度、「らしさ」は捨ててない
2024年11月19日、ジャガーのニュースで車ファンは騒然となった。突如としてジャガーは車が一切出てこないコンセプトムービーを発表したのだ。 【全画像をみる】ブランド刷新で「ジャガーは終わった」のか? むしろテスラ並みの注目度、「らしさ」は捨ててない Copy Nothingというキャッチコピーとともにダイバーシティ溢れるモデルたちがビビットなカラーの服を着てエレベーターから登場し、壁にペンキで色を塗るといったものだ。 次いで12月3日、Type00というコンセプトモデルが発表された。安藤忠雄の建築のような直線的なフロントに、リアウインドーもないリアデザイン、マットなピンクに塗られた車体に賛否は激しく分かれた。かのエリザベス女王も愛した上品で妖美なジャガーのイメージとは似ても似つかないものだった。 「大胆だ」と評価する声がある一方、「伝統の崩壊だ」「ジャガーは終わった」と批判する意見も少なくない。果たして、このデザインが持つ真の意図とは何なのだろうか。
なぜ伝統を壊すのか?
多くの批判意見を一言でまとめると、「なぜジャガーが今まで培ってきた伝統を一瞬で捨てたのか」という意見だ。 その理由を推察するに、一つ目の理由として、圧倒的にジャガーが売れていないという現状にあるだろう。ジャガーは2019年に4450億円の赤字を計上している。また、販売台数を見ても2023年の販売台数は6.4万台であり、姉妹ブランドのランドローバーの約35万台に遠く及ばない結果となっている。ちなみにライバルであるBMWは同年に約220万台を販売しており、ジャガーと実に35倍の開きがある。 いくら伝統があり、明確なアイデンティティを持っているジャガーでもマーケットに支持されないのであれば意味がない。ブランドが生き残るためにはまさに背水の陣の覚悟でブランドを刷新する必要がある。 二つ目の理由として、2021年ジャガーが完全EV化に舵を切ったためだ。 EVは「乗るラジコン」と揶揄されることがあるように、内燃エンジンが持つ鼓動や音のブランド毎の個性がなくなってしまうため、完全に車両の内外装デザインとUX体験で世界観を表現しなければならない。家電製品のようにコモディティ化しやすくもあり、明確な個性を作ることが不可欠なのである。つまり、往年のジャガーのように気品のあるスタイルを持ちながらも、大排気量のエンジンをドロドロと轟かせて消費者を惹きつけることが難しくなったのだ。 実際に同社初のフルEV「I‑PACE」は、2019年にワールドカーオブザイヤーを受賞するなど車両自体は好評を得たが、市場での販売は芳しくなく、2025年に生産終了がアナウンスされている。 「I‑PACE」の失敗は、ジャガーの既存の方向性ではEV市場においてブランドとしての存在感を確立できないことを浮き彫りにした。それゆえに、今回のようなブランド刷新に舵を切ったことは想像に難くない。