city不city、水霊霊的、班味、銀発力量…「2024流行語ベストテン」が解き明かした現代中国
5. 硬控 (ゲンコン)
もともとはスマホのアクションゲームの用語で、相手に倒されたり魔法をかけられたりして、固まって動けなくなることを指した。それが転じて、「夢中になりハマって他のことが手につかなくなる」の意味に使われている。「這篇漫画硬控了我」(チェーピエンマンフアゲンコンラウォー)は、「私はこのマンガにハマって他のことが手につかない」。
6. 水霊霊地 (シュイリンリンダ)
韓国の人気女性5人組ボーカルグループ「ルセラフィム」(LE SSERAFIM)のメンバーである洪恩採(ホン・ウンチェ)が、ある中国メディアの撮影時に語った。「あら、私が真ん中で、両手に花でキラキラだわ」。 その時、「キラキラ」を中国語の通訳が「水霊霊地」(みずみずしい)と訳した。その形容詞が珍しい表現だったので、中国の若者たちの間で流行りだした。
7. 班味 (バンワー)
「班」は組織、すなわち会社のこと。「味」は場の雰囲気。そのため「班味」は、「会社疲れ、会社のストレス」を意味する。 超不景気の現在は、少しのミスで会社をクビになったりするため、会社員は緊張感の中でオーバーワークを余儀なくされがちである。そのため会社員たちは日々、「班味」を感じながら働いているというわけだ。
8. 松弛感 (ソンチーガン)
上記の「班味」の対義語である。ある中国人ブロガーが、こんな経験を綴(つづ)った。「ある旅行者一家に会った。彼らは荷物を誤って、全部自宅へ送られてしまった。それでも焦ることも目くじらを立てることもなく、また必要なものは買って、相変わらず楽しそうにおしゃべりしていた」。 そこからSNS上では、「家庭のリラックス感は、やはりいいな」という話になった。この「リラックス感」が「松弛感」である。
9. 銀発力量 (インファーリーリアン)
「銀発」は「銀髪」、すなわち「老人」。「力量」は「パワー」。日本でもおなじみの「老人パワー」である。 「80後」(バーリンホウ=1980年代生まれ)以降は皆、一人っ子でパワー不足なのに対し、「銀発力量」はすごい、という意味などに使われる。日本では「暴走老人」という穏やかならぬ流行語もあったが、「銀発力量」はあくまでも誉め言葉である。 習近平主席は10月9日、「中国式現代化が『銀発力量』の推進に貢献するのだ」と号令をかけた。不景気のあおりを受けて、年金さえろくに受け取れない高齢者に気を遣った言葉に聞こえた。
10. 小孩哥/小孩姐 (シアオハイグー/シアオハイジエ)
「小孩」は「子供」。「哥」は「兄貴」で「姐」は「姉貴」。つまり、子供なのに兄貴や姉貴のような人。日本語の「ませガキ」を思い起こす。 ただ、「小孩哥/小孩姐」は誉め言葉である。中国では今年、11歳でロケットを作ってしまった男の子や、14歳でオリンピック新記録で金メダルを獲ってしまった女の子などが出現し、「子供なのに大の大人みたいでスゴイ」となった。そうした時に使われた言葉である。 以上が、いわば中国政府公認の「流行語ベストテン」である。後編【八失人員、夜騎大軍、上岸、単身狗、白菜価…「2024隠語ベストテン」に見るトホホな中国】では、「隠語ベストテン」を紹介する。
近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長)