写楽や歌麿を世に送り出した蔦重のスゴい仕事術…NHK大河「べらぼう」主人公に学ぶ仕事のコツ
蔦重は各所に関心を向けて人脈を広げ、「自分はこんなことを実現したいんだ」という想いやアイディアを発信することを、いとわず行っていました。 その地道な根回しが、彼の功績を支えた大きな柱であったことは間違いありません。 たとえば、あなたが会社に勤めていて、「いつかこういうプロジェクトに参加したい」と考えているとします。そうしたら、その気持ちを日頃から周囲の人の耳に入れるようにするのです。そのようにして周りを巻き込み、味方を増やしながら準備を進めていきましょう。
そうすればやがて機会が訪れたとき、あなたに白羽の矢が立つ可能性は、ぐんと高まります。 とにかく、何かに挑戦したいと思ったのなら、その事前準備を怠ってはならないのです。根回しをせずにことに当たるというのは、いうなれば普段着で登山するのと同じこと。無防備な状態で険しい山道に臨んだらどうなるかは、火を見るよりも明らかでしょう。 狂歌連(狂歌が趣味の武士たちのサークル)や吉原連といった集いにこまめに参加するなど、日頃からさまざまなところに顔を出すことは、蔦重にとっては重要な任務の1つでした。
張り巡らせたネットワークは、蔦重の財産であると同時に、いわば大事な商売道具。人々と密な関係を構築していくことが、将来的な大物作家の確保や、販路の調達へとつながっていったのです。言うなれば、日常的に根回しを行っているようなものです。 たった1つのコネクションを持っていることが、夢や野望の実現につながったということは、往々にしてあるもの。蔦重はそれをよく知っていたからこそ、日夜、人々と活発に交流し、自分の夢やプランを口にしていました。
蔦重が亡くなった後の蔦屋から、『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』に代表される、曲亭馬琴と葛飾北斎がタッグを組んだ大ヒット作が刊行されました。これらは当時、『南総里見八 犬伝』よりも高い人気を誇りました。この見事なコラボレーションも、蔦重の強靭な ネットワークから生み出されたものと言えるでしょう。 ■蔦屋の礼をわきまえ、方々に気を回す人柄 そして、人脈を広げていくときに忘れてはならないのが、礼儀、そして相手を慮る気持ちです。