小学生の暴力行為、10年前の6.4倍にまで増えたのはなぜ? 「暴力的な子が増えたと考えるのは危険」と専門家
■学校はどういう対応をしていくべきか ――学校は、暴力やいじめが深刻化しないよう、どう対応すべきでしょうか。 まずは、「嫌なことがあったらちゃんと伝える」ことを、日頃から子どもに伝えることが大事です。「いじめや暴力はしてはいけない」こと以上に、強く発信した方が良いでしょう。そのうえで、アンケートなどをとおして子どもの声を拾っていきます。いじめや暴力を受けていないか。さらには子どもからだけではなく、教師から暴力や暴言を受けていないかについても、アンケートで問うたほうがよいでしょう。 小学校ではいま、高学年では学級担任制ではなく、学年担任制あるいはチーム担任制により、複数の教員が複数の学級を担当する方法が広がりつつあります。教員とくに若い先生の負担軽減が主目的ですが、子どもへの効果も大きいと期待されます。複数の教員が学級に関わることになるので、子どもが相談先の教員を選ぶことができます。 学校外の相談機関のなかには、オンライン上でチャットを利用した相談窓口も設けられています。教師にも親にも対面で言いにくい、アンケートにも書きづらいこともあると思います。子どもたちには、そのようなツールも活用してほしいと思います。 ――暴力やいじめへの細やかな対応は、教師たちの長時間労働につながりませんか。 事態が深刻化するほど、毎月、報告する必要も出てくるので仕事の増加につながります。日本ではいじめも暴力も不登校も、すべて教員、特に担任が丸抱えする仕組みになっています。教師が手に負えないと思った時点で、カウンセラー、スクールロイヤー、ソーシャルワーカーなどの外部に委ねるべきです。ですが、いじめ対応の外部化は、まだ整備されていません。教師はトラブル対応の専門家ではありません。早急に整え、教員は授業を教えること、学級全体を運営することに集中すべきです。 ■暴力、いじめは教員が丸抱えしない ――教員が抱え込むことにより、どんな弊害が考えられますか。 丸抱えの長い歴史が、いじめや暴力を件数として見えにくくしてきました。わざわざ暴力行為があったことを表立って言うものではない。表立てると、「あの先生は、指導力が足りない」と、学校内外から言われる。そうならぬよう、担任の先生がすべてを抱え込み、事態はむしろ悪化していく。担任が丸抱えする体制は、教員のなり手不足を招く原因だと思っています。