極度の疲労で動かなかった足…なぜ日本はメキシコに1-3で完敗しメダルに手が届かなかったのか…城氏の東京五輪総括
前半22分、後半13分に失った2点はいずれもセットプレー。 2失点目はフリーキックから飛び込んできたバスケスにヘッドで合わせられたが、ピンポイントでディフェンスの間のギャップを狙われた。日本はゾーンで守っていたため誰もマークにつくことができなかった。今大会は、セットプレーのディフェンスを状況に応じてゾーンとマンツーマンを使い分けていたようだが、ゾーンの欠点が如実に出てしまった。あそこはマンツーマンでマークをつけて責任を持たせるべきであった。ディフェンス戦術のミス。3失点目も、コーナーキックから後ろから走り込んできたノーマークのベガにヘッドを決められた。遅れて遠藤がカバーに入ったが、集中力に欠けていたし、そもそもポジショニングに問題があった。 一発勝負のトーナメントでは、こういうセットプレーでの攻防が勝敗を分ける。 1次リーグでは1-2で日本に負けていたメキシコは最終ラインを一人代えただけでメンバーは、ほぼ一緒だった。日本はサイドの裏を狙い、前回は攻略したが、この試合ではメキシコは両サイドのポジションを低く下げて、日本に裏をとらせないようにしていた。逆に言えば、日本の両サイドは前へ上がれる状況になっていたわけだが突破はできなかった。また前回の試合では序盤様子を見ていたメキシコは、日本の動きが鈍いことを察知すると、スタートから積極的にプレッシャーをかけてきた。メキシコに対策を練られた上に、OA枠の3人に堂安まで疲れて動けないのだから、積み重ねた小さなミスが1-3というスコアにつながったのも無理はなかった。 なぜコンディション調整に失敗したのか。 試合後に号泣した久保が、テレビインタビューで「気の緩みがあった」と発言していたが原因のひとつはそこにあるのだろう。金メダルをチームのテーマとして掲げて臨んだ大会の準決勝で、スペインに延長の末敗れた。気持ちの切り替えとリカバリーの両方が重要だと思っていたが、メンタル面を立て直すことが難しく、コンディション調整の失敗につながったのかもしれない。 五輪史上過去最強のメンバーで挑みメダルを取れなかった。ロンドン五輪に続きメダルの壁に阻まれた。まだ日本に本当の力がないことを思い知らされた。スペイン戦でも指摘したが、ハイプレッシャーの中でのプレーの精度に差があった。ボールの置き所を支配できていたのは久保一人だけ。この壁を突き破るには、まず個の能力を高めなければならない。