極度の疲労で動かなかった足…なぜ日本はメキシコに1-3で完敗しメダルに手が届かなかったのか…城氏の東京五輪総括
「もっとやれた」「もったいない」。無観客の埼玉スタジアムに鳴り響いたホイッスルを聞くと同時に私の胸に湧き上がった素直な感想である。 敗因はハッキリしている。前半13分に先制点を許したゲームの入り方と、あまりにも悪かったチームコンディションに尽きる。久保以外、ほぼ全員の動きが重たかった。疲労が足にきて、シュートを放った際の足の振り方も鈍く、腰が回っていない。ボールにミートすることができず、何回も作った決定機にコースをコントロールできなかった。 真夏の酷暑の中で中2日での6連戦。しかも決勝トーナメントに入ってニュージーランド戦、スペイン戦と続けて延長に突入して120分を戦った。疲労がピークに達しているのは理解できる。だが、メキシコも、ほぼ同じ条件。彼らも準決勝ではブラジルと120分を戦いPK戦で敗れた。メキシコの動きも、決して良いわけではなかったが、ここ一番では集中し決定的なミスは犯さなかった。そこに個の能力と、地力の差を感じざるを得なかった。 特に目立って悪かったのが、遠藤と田中。ボランチの2人がまったく機能しなかった。中盤でセカンドボールを拾えず、縦にパスが入らない。チームの心臓部が動かなければ、展開は作れない。後半26分に田中、後半35分に遠藤を入れ替えた。2人の交代の順序が逆で、もっと早くカードを切るべきだったのかもしれない。代わりに入った板倉、三好が劇的に何かを起こせたわけではなく、天秤にかけた森保監督が動けなかった遠藤を外す決断が遅れたのも仕方がなかったと考える。ただドリブルで敵陣に何度も切り込み、唯一の得点を個人技で奪いとった三笘の投入は後半17分。ここはベンチの動きはワンテンポ遅れた。 完全な自滅だった。 先制のPKを与えた場面は、ベガに左サイドからペナルティエリアにドリブルで持ちこまれた。簡単に抜かれた遠藤は「いかなきゃ」と慌てて後ろから追いかけてファウルを取られた。冷静に対処すべきだったが、コンディションが悪いと体の反応が遅れ、ラフになるという現象が起きる。またベガの仕掛けもしたたかだった。一瞬、止まってファウルを誘ったのだ。プレッシャーのかかる中での間合いや判断も一枚上手だった。