元防衛省職員が過疎地にUターン、1人きりで地域情報誌を創刊した結果。50人以上の仲間が集い地域が熱を帯びていく ドット道東・北海道
「新卒で働いた東京の企業は同期が140人いて、自分の代わりは大勢いました。一方、道東では自分を個人とみてくれて介在価値があるように思います。役に立てている実感があるし、必要としてくれているのをバシバシと感じることができます」(工藤さん) 工藤さんに限らず、若い世代の地域志向は調査分析からも見えています。 「じゃらんリサーチセンター」がZ世代の価値観や旅行意識を分析したところ、「地域のためになること、貢献できることを選ぶ」がコロナ以前より大きく上昇し、Z世代の「地域貢献意識」の高まりがみえてきました。 リモートやオンラインでの学び方、働き方が柔軟になったことや、若い世代の都心居住率は年々高まり続け約6割となり、親世代からずっと都心部に居住していると「故郷と呼べる場所がない」こと。 また、中西さんのように地域に居を構え地域活性に向き合う若手への注目も要因の一つに挙げられます。 「地域」を強く意識する機会が増えていることで、地域で活躍することへの憧れ・かっこよさのような志向性が表れているとの見解もありました。 こうした若い世代を中心とした地域志向の高まりは、人口減少が深刻になる地方にとって希望の一滴になりうるかもしれません。
「楽しく」の根底に、責任と危機感
ドット道東のビジョンを説明する言葉は「住むと決めた場所で楽しく生きたい」という一文から始まります。 制作した冊子やWebサイトはデザインが洗練され、イベントも若い世代が楽しく参加できる仕組みが磨かれています。「楽しく」を体現しながら地域課題の解決をめざすクリエイティブな仲間の集まりは、一言でいうとたしかにかっこよく映るでしょう。 ですが、ドット道東の運営にも関わる工藤さんは、東京でSNSを通じてみていた地元の姿と、実際にUターンして関わるようになった姿のギャップを教えてくれました。 「地域課題に対峙するプロジェクトは、実際はどれも思ったよりずっと泥臭いことが身に沁みました。東京でSNSを眺めていたときはもっとクールなイメージだったんです。でも、“住む人が楽しくなるからやったほうがいい”と思ったら、やったことがないプロジェクトでもとにかく形にしていく。がむしゃらに汗をかいて取り組んでいるんだと気づきました」(工藤さん)