日本のエンゲル係数は先進国で「圧倒的1位」28%超…今後も「食費率」が上がり続ける物価高以外の2つの根本理由
■日本のエンゲル係数は大きく上昇、G7諸国トップに こうして生じた食料価格の高騰が一因となって、最近は日本のエンゲル係数(家計の消費支出に占める食費=飲食料+酒類+外食の割合)の上昇が目立つようになっている。 日本は家計調査を使い、日本以外は作成基準が統一されているGDP統計(SNA)の国内最終家計消費の内訳から算出したエンゲル係数で各国の動きを図表3で比較してみた。 コロナ禍が襲った2020年にレジャーや旅行など外出関連の消費支出が落ち込んだのに食費支出は巣ごもり消費で比較的堅調だったため日本のエンゲル係数は、前年の25.7%から27.5%へと急上昇した。 日本以外の各国でも2020年には、日本と同じ理由でエンゲル係数が大きく上昇している。 2021年に入ると日本をはじめ各国でエンゲル係数は大きく低下し、通常年に向かう動きが見られる。しかし、日本の場合は、円高の影響もあって、2023年には27.8%と圧倒的にG7諸国トップの水準まで上昇した。 年間では確定していないが、2024年の1~8月のエンゲル係数は28.0%、8月は30.4%(年収1000万~1250万円の世帯では1~8月で25.5%・年収200万円未満の世帯は33.7%)。2024年全体では28.5%まで上昇すると見込まれる。 2020~21年の動きはコロナの影響でやや特殊なので、それを除いて、エンゲル係数の長期推移をたどって見ると以下のようにとらえられる。 まず、エンゲル係数の各国の相対レベルは、あまり変わっていない。かねてより、米国が特別低く、日本、イタリア、フランスで高くなっている。スウェーデン、英国、ドイツは、両者の中間のレベルである。 多彩な料理や食文化にそれぞれ特徴のある日本、イタリア、フランスで高く、ファストフードの米国で特別低くなっている点が印象的である。料理が名物とされているかのランキングとエンゲル係数の高さがほぼ一致しているのが興味深い。すなわち、先進国だけ取ってみると、エンゲル係数は所得水準の差というよりは、各国の国民が食べ物にどれだけこだわるかの指標の側面が大きいといえよう。 欧米主要国の動きを見る限り、反転の時期はややずれるが、日本と同様に、下がり続けていたエンゲル係数が2000年代に入って上昇に転じている。 ただし、反転上昇のカーブについて日本がもっとも鋭角的だとは言えよう。 エンゲル係数の反転上昇の動きがこのように世界共通であるということは、日本のエンゲル係数の上昇が意味するものとして指摘されることが多い生活苦の拡大というよりは、先進国でおこっている共通の社会の構造変化を想定する必要がある。