「推しは未来を見せてくれる存在」還暦でBTSにハマった麻木久仁子が語る“シニア世代の推し活”
「チャレンジしてみたい」と思わせてくれる――推し活が人生を歩む活力に
――麻木さんと同じシニア世代が推し活を楽しむことについてどう思いますか。 麻木久仁子: 還暦になると、人生の時間に対する切実さを感じるんです。なかには同じ世代でも先に旅立ってしまう人もいる。昨年も、仲の良かった人が闘病の末に亡くなってしまったんです。そういうことに直面すると、1日1日がかけがえのないものなんだと実感しますよね。そんな日々に大きな喜びを与えてくれる、ものすごく大事な存在です。 BTSは現在グループ活動を中止していますが、2025年に兵役を終えて再スタートしてくれると言っていて、まさに数年後の未来を見せてくれている存在。「少なくとも2025年までは頑張っていくぞ」って私に思わせてくれる。人生を歩ませてくれる活力ですよね。 この歳になると、未来を見せてくれる、未来に目を向けさせてくれる存在ってすごく大事で貴重。若いころは、未来なんて当然来るものって何の迷いも疑問も持たなかったけど、この歳になると必ずしもそうではないと痛感するんです。そんな中で推しは「あなたにも未来がある。だから頑張れ」って言ってくれている気がする。それを感じると、私にも未来があると前向きになれる。そう思わせてくれる存在って素晴らしいですよね。 ――推し活を通して未来を見ることができる、まさにシニア世代にぴったりなのかもしれませんね。 麻木久仁子: あと、推し活をすると自然と冒険心がわいてきますね。例えば、BTSは自分たちで生配信をしたり、曲を書いたりして、自分たちの手で何かをしようとしています。そんな彼らを見ていると、私も「自分から発信しよう」って自然と思えるようになったんです。実はYouTubeを始めたのは、彼らのおかげなんですよね。それまではパソコンが全く使えなくて、メールくらいしかできなかったけど、今は自分で撮影して、編集して、配信しています。 歳を取ると、良い意味でも悪い意味でも知恵がついて、何でも分かった気になって冒険しなくなってしまう。要するに知らないことはしなくなるんです。知っていることだけで、生活は成り立ちますから。こうして、推しからもらってインプットしたエネルギーを、別のものにアウトプットできる。チャレンジしてみたい、と思えることが推し活の素晴らしいところじゃないかなと思います。 ただ、推しからもらったエネルギーの使いどころがなくなって変にためちゃうと、疲れたり、周囲や推しに迷惑をかけてしまったりするのかなと思いますね。推しからせっかくもらったエネルギーですから、どんどん使うべきです。